時空生物学講座
パターン形成研究室



キーワード:
魚の模様、反応拡散、カブトムシの角、ヒレ形成、3D形態
生物の「模様」や「形」ができる物理的な法則を解明する
生物の器官や臓器の働きの多くは、その「形」に依存しています。これらはどのような原理でできるのでしょう?一つの答えは「遺伝子が決めている」ですが、遺伝子は細胞の中だけで働くものであり、細胞よりもはるかに大きな構造を、直接に決めることはできません。実は、多くの場合、その答えは「物理的な法則」です。私たちの研究室では、魚の皮膚模様が2種類の色素細胞の相互作用が生み出す「波」であることを、実験・数理解析から証明しました。さらに、魚の骨格や、節足動物の外骨格の3D構造が、どのような物理法則でできるのかを解明すべく研究を続けています。その答えを知りたい人は、是非、研究室を訪問してみてください。

図は、ゼブラフィッシュの椎骨です。細胞の大きさは骨に比べてはるかに小さく、しかも、細胞は手も目も持っていません。大きさを測るメジャーも有りません。しかし、細胞は正確にこのような「構造物」を作ることができます。どうやって?探っていくと、あっと驚く仕組みが見つかります!
メンバー
近藤 滋 教授 | skondo[at]fbs.osaka-u.ac.jp |
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渡邉 正勝 准教授 | watanabe-m[at]fbs.osaka-u.ac.jp |
黒田 純平 助教 | jkuroda[at]fbs.osaka-u.ac.jp |
宮澤 清太 特任准教授 | seita[at]fbs.osaka-u.ac.jp |
荒巻 敏寛 招へい研究員 | taramaki[at]fbs.osaka-u.ac.jp |
日野 太夢 特任研究員 | |
松田 佳祐 研究員(学振PD) | |
竹田 桂子 事務補佐員(秘書) | |
田中 みどり 技術補佐員 | |
谷口 理恵 技術補佐員 |
研究者の詳細を大阪大学研究者総覧やResearch Mapで検索できます。
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Q&A
- 現在注目しているテーマは何ですか?
- 骨に関しては、コラーゲンの結晶とそれを操る細胞の関係が面白いです。細胞が、分業体制を取る建築現場の作業員の様に、柱(コラーゲンの結晶)を組み立ててヒレ骨を作る過程が明らかになってきています。細胞が積み重なって胚ができる、というイメージが覆ります。また、カブトムシやツノゼミの角の様に、複雑かつ巨大な構造が突然出現する仕組みが興味深いです。昆虫は、巨大な構造をコンパクトに折りたたんだ状態で作成し、それを一気に膨らますことで、突然の形態変化を可能にするのです。
- 最新のブレイクスルー、研究成果について教えてください。
- カブトムシの角の折り畳み原理が解ったことです。角の3次元構造は、原基の表面にある皺の2次元パターンに暗号化されており、皺パターンを変化させることで、いろいろな形の角を出現させることができます。また、コラーゲン結晶を操る細胞の働きも、予想外にダイナミックで、形態形成の奥の深さに毎日驚いています。
- どのようなバックグラウンドを持つメンバーで研究をすすめていますか?
- 非常にいろいろなバックグラウンドのメンバーがいます。研究の基本は分子遺伝学的実験なので、生命系の学生が多いですが、だいたい1年以内で技術の習得は可能です。あとは、本人の想像力次第です。
- 国内外の研究機関との連携について教えてください。
- 国内では、主に物理シミュレーションや数理モデル関係の専門家にいろいろと教えてもらうことが多いです。私のところの基本的なスタンスは、形ができる原理を「実験で証明する」、ですので、ほとんどのメンバーは実験ベースの研究をしています。しかし、現象が複雑になると、理解のためには、シミュレーションなどの数理的な処理が必要になることが多く、その時には専門家に助けてもらいます。ただ、シミュレーションを丸投げするわけではなく、あくまでも「指導をしてもらいながら、こちらで計算」します。実験と理論の両方ができる研究者を育てたいので。
- 研究室から巣立った人たちはどのような道を歩まれていますか?
- 博士号を取得した人は基本的にアカデミックで、大学、理研、生命科学ベンチャーで研究員として研究を進めています。また、魚の模様研究の経験を生かして、水族館の学芸員として活躍している人もいます。修士卒の場合は、基本的に一般企業に入社している例が多いです。
- 今後どんな展開が期待されますか?
- どこにゴールがあるかわからない研究が多く、毎日が宝探しの冒険です。昆虫のあらゆる外部形態を生み出せる折り畳み法、任意の骨の3D形態を作れる原理、骨の大きさを決める原理、などの「宝」を見つけたいと思っています。
研究成果
論文、総説、著書
2021年
Effective nonlocal kernels on reaction-diffusion networks
J Theor Biol. 509:110496 2021 (PMID:33007272 DOI:10.1016/j.jtbi.2020.110496)
2020年
Pattern blending enriches the diversity of animal colorations
Sci. Adv. 6(49):eabb9107 2020 (PMID:33268371 DOI:10.1126/sciadv.abb9107)
The physical role of mesenchymal cells driven by the actin cytoskeleton is essential for the orientation of collagen fibrils in zebrafish fins
Front. Cell Dev. Biol. 8:580520 2020 (PMID:33154970 DOI:10.3389/fcell.2020.580520 )
Genetical control of 2D pattern and depth of the primordial furrow that prefigures 3D shape of the rhinoceros beetle horn
Sci Rep 10(1):18687 2020 (PMID:33122767 DOI:10.1038/s41598-020-75709-y)
Effective nonlocal kernels on reaction-diffusion networks
J Theor Biol 509:110496 2020 (PMID:33007272 DOI:10.1016/j.jtbi.2020.110496)
Structure and development of the complex helmet of treehoppers (Insecta: Hemiptera: Membracidae)
Zoological Lett 6:03 2020 (PMID:32123574 DOI:10.1186/s40851-020-00155-7)
Cryo-EM structures of undocked innexin-6 hemichannels in phospholipids
Sci. Adv. 6(7):eaax3157 2020 (PMID:32095518 DOI:10.1126/sciadv.aax3157)
Method for disarranging the pigment pattern of zebrafish by optogenetics.
Dev. Biol. 460(1):12-19 2020 (PMID:30578760 DOI:10.1016/j.ydbio.2018.12.019)
2019年
The minimal gap-junction network among melanophores and xanthophores required for stripe-pattern formation in zebrafish
Development 146(22) 2019 (PMID:31666235 DOI:10.1242/dev.181065)
Comparative morphological examination of vertebral bodies of teleost fish using high-resolution micro-CT scans.
J. Morphol. 280(6):778-795 2019 (PMID:30945336 DOI:10.1002/jmor.20983)
KLF4-Induced Connexin40 Expression Contributes to Arterial Endothelial Quiescence.
Front. Physiol. 0.472222222 2019 (PMID:30809154 DOI:10.3389/fphys.2019.00080)
2018年
Connexin Communication Compartments and Wound Repair in Epithelial Tissue
Int. J. Mol. Sci. 19(5):1354 2018 (PMID:29751558 DOI:10.3390/ijms19051354)
Flexibility of pigment cell behavior permits the robustness of skin pattern formation
Genes Cells 23(7):537-545 2018 (PMID:29797484 DOI:10.1111/gtc.12596)
Anisotropy of cell division and epithelial sheet bending via apical constriction shape the complex folding pattern of beetle horn primordia
Mech. Dev. 152:32-37 2018 (PMID:29920372 DOI:10.1016/j.mod.2018.06.003)
Melanophore multinucleation pathways in zebrafish
Dev. Growth Diff. 60:454-459 2018 (PMID:30088265 DOI:10.1111/dgd.12564)
Simple rules for construction of a geometric nest structure by pufferfish
Sci Rep 8(1):12366 2018 (PMID:30120331 DOI:10.1038/s41598-018-30857-0)
2017年
Complex furrows in a 2D epithelial sheet code the 3D structure of a beetle horn
Sci Rep 7(1):13939 2017 (PMID:29066748 DOI:10.1038/s41598-017-14170-w)
Gap Junction in the Teleost Fish Lineage: Duplicated Connexins May Contribute to Skin Pattern Formation and Body Shape Determination
Frontiers in Cell Dev. Biol, Cell Adhesion and Migration 2017 (PMID:28271062 DOI:10.3389/fcell.2017.00013)
2016年
An updated kernel-based Turing model for studying the mechanisms of biological pattern formation
J. Theor. Biol. 414:120-127 2016 (PMID:27838459 DOI:10.1016/j.jtbi.2016.11.003)
Genetics of body shape: Connexin43 is the key to two zebrafish mutants with shorter backbones and fins
Atlas of Science 2016
Suture pattern formation in ammonites and the unknown rear mantle structure
Sci Rep 6:33689 2016 (PMID:27640361 DOI:10.1038/srep33689)
Two different functions of Connexin43 confer two different bone phenotypes in zebrafish
J. Biol. Chem. 291(24):12601-11 2016 (PMID:27129238 DOI:10.1074/jbc.M116.720110)
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当研究室の研究内容に興味があり、研究をしたいという強い意欲のある方。生き物が好きな方、細かな手作業やモノづくりが好きな方も歓迎します。出身大学や出身学部は一切問いません。
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〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-3
大阪大学大学院生命機能研究科 生命機能B棟2階 パターン形成研究室
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