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2023.8.30 その他 高校生向け研究室ツアー(廣瀬研究室)

日時 2023年8月8日(火)
受け入れ研究室 RNA生体機能研究室〈廣瀬 哲郎 教授〉
学校名/参加人数 兵庫県立小野高等学校/8名

今年も廣瀬教授らによる高校生向けの研究室ツアーが開催されました。研究室のテーマは、いま盛んに研究されている「ノンコーディングRNA」。タンパク質に翻訳されないRNAのことです。わからないことがたくさんあり、世界中の生物学者の注目を集めています。どのような魅力があって、どのように研究されているのか。そもそも研究者とはどのような仕事なのか。高校生のみなさんには、どのように映ったでしょうか。ツアーの様子をすこしだけ紹介します。

21世紀はゲノムの時代

「ゲノム」ってなんでしょう?この問いから始まりました。教科書にもでてくるので、知っているかもしれませんが、二つのことが重要です。「子は親に似ている」ということ、そして「カエルの子はカエル」ということ。それらのことがわかれば、遺伝やゲノムはむずかしくない。そう語る廣瀬教授は、いまの高校の教科書をみてレベルの高さに感動したそうです。「細胞」「設計図」「進化」「DNA」「ミュータント」など高校の生物学ででてくることを(余談も、大学院ならではの話もまじえて)いっきに駆け抜けます。

遺伝暗号を解読するクイズをとおして遺伝子のはたらきを理解するコーナーもありました。手にしたゲノムの断片にどんなタンパク質がコードされているのか、されていないのか。アタリもハズレも、わかりません。それぞれが「転写」「翻訳」の装置になって読み解きます。人間であれば2万種類くらいあるタンパク質。あけてびっくりなのがたのしみで、動物から植物まで、かたちもはたらきも様々なタンパク質がとびだしました。

タンパク質はいつどこでつくられるのでしょう?つくる量はどのようにコントロールされているのでしょうか。それは、ゲノムにはタンパク質をコードしない部分(ゲノムの暗黒物質)がたくさんあって、そこからつくられるノンコーディングRNAが鍵を握っているそうです。「遺伝子はタンパク質をつくるだけではない」ともいいます。ということで、ちょっと深い研究のことも紹介されました。「複雑な生き物になればなるほど、ゲノムの暗黒物質が多くなる」というのもおもしろく、廣瀬教授はノンコーディングRNAが生き物の複雑さを支えるという仮説を立てています。

研究者という職業

「研究者」「科学者」ってどんな仕事でしょうか。生物学者の場合、生き物がとても好きなひと、あるいは生物学が好きなひとが研究者になります。毎日のように研究室に来て、朝から晩まで実験をしています。試行錯誤するなかで「世界中だれも知らない真実を、自分だけが知っている」という瞬間があって、それを体験してしまうと、いつも実験をするのが苦痛ではなくなるといいます。クリエイティブに、だれも知らなかったことをつくりだす職業だと廣瀬教授はうれしそうに語ります。

自然のしくみがあって、それを人間が理解するかたちに示すのが自然科学者。キャリアパスとしては、まず大学にはいって、さらに大学院でトレーニングして、ようやくスタートラインに立ちます。実際に研究者の話をきいて、めざしたくなったかもしれません。あるいは、毎日、日曜日も、旅先でも実験をしたくなるという研究者の体質を知って驚いたかもしれません。どれだけ実験を繰り返してもムリなんじゃないかというときどうするの?そんな質問もでていました。研究者はどのようにして「発見」するのでしょうか。廣瀬教授は、なにをどう明らかにできるのか見極めて、限られた時間のなかで最大限おもしろいことをみつけるのが重要だといいます。

実験は、どのように行われているのでしょうか。講義のあとで大学院生の高生大希さんに研究室を案内していただきました。細胞を培養する装置や、細胞内の構造体を調べられる顕微鏡などが並んでいて、興味をそそります。そのような機器をつかってどのようなデータが得られるのか、また、どのようなことが研究室で発見されつつあるのか。最近では細胞のなかに人工的にゲノムの暗黒物質の塊(液滴)をつくり、そのはたらきを調べることもできるそうです。ますます盛り上がるゲノムのサイエンス。科学者をめざす高校生が大学院でどのような研究をするのか、廣瀬教授もたのしみにしています。

当研究科ではスーパーサイエンスハイスクール指定校など、府内外の高等学校向けに随時、研究室紹介を行なっています。研究室独自のプログラムを通して科学、研究への理解を深めていただきます。

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