気がつけばほったらかしの「リケ母日記」なのだが、意外な読者様たちがいることがわかったので、書いたまま放置されている日記も過去に遡ってできるだけアップロードしていこうと反省している。

意外な読者というのは、友人や女性 PI、海外研究者の方達だ。最近会えていない古い友人たちからも「密かに読んでいる」と言っていただいたりしている。カイがドタバタしながらそれなりに頑張っている(つもりな)のを生暖かく眺めていただけたらとても嬉しい。今年は分子生物学会のプログラム委員長なるものも拝命し、分生史に残る名ポスターを目指してイラストレーターの U さんに作成していただいた。今年のポスターのお題はダイバーシティと知の格闘場たる学会だ(笑)。暑苦しいコンセプトやアイデアを聞いてくださり、細かい修正に対応していただいた U さんには深くお礼を申し上げたい。学会会場でフラフラしているカイを見かけたら、ぜひ、ポスターやプログラムについて感想を聞かせてください。

私のこんな日常のつぶやきが何のために役に立つのか? それはずばり、世界の同志(?)に向けた励ましなのである。実験系の研究者は研究室での拘束時間が長く、女性は研究者としてのハンデを背負っていると私は思っている。子供のことや家族のことで辛い決断を迫られることも男性よりは確率的に高い。辛い時、悩んだときに、私のような立場にある人間でも、同じように悩み、考えて、何かを取捨選択しているのだということをわかってもらうだけでも、誰かを励ますことができるんじゃないかと思いつつ、この日記を書いている。

私が駆け出しの研究者だったら、「海外ラボ主催経験がある女性教授」なんて人は、神経回路がちょっと違ってて、いつもテンション高めで突っ走れる人なんじゃないかなって思うだろう。多分、30年前は間違いなくそう思っていたはずだ。でも30年後の私は、やっぱりトホホで、日常生活では猫と子供に振り回されている(若干騒がしめな)普通の人である。人生はタフで厳しい。辛いことが多々あると、一人で戦っているような気がして、誰にも理解されない孤独な世界に取り残されているような気がして、どうしたらいいのかわからなくなる。海は広くて、小さなコンパスを頼りに櫂を漕ぐ私はとても心もとない。船に乗っているのは結局のところ私一人だ。そんな時は猫を抱きしめてこれまでの幸せな思い出を振り返る(なんて暗いんだw)。それから、遠くから手を振る友人たちのことを考える。波間の間に、小さな船に乗って同じように櫂を漕ぐ人々が時折見える。私も時々手を振る。いつか遠くの岸辺にたどり着くまで、私はもうちょっと頑張ろうと思う。