運命の愛猫、セラが亡くなってからというもの、我が家ではシンガプーラの雑種・ココすけ(♀)がこの世の春を謳歌していたが、私のくろねこ愛のあまり、実は1年前に保護団体から黒猫を譲渡していただき、懲りもせず多頭飼いに突入していたのである。

駅前に保護犬猫を連れて毎週やってくる保護団体をいつもチェックしていたのだが、その中に、何度か、くろねこ様が登場しているのをガン見していた。大きくてもふもふである。遠目には何かわからない物体だ。かわいい。黒い。

ちょっと待て、オマエは黒ければ何でもいいのか?と言う根源的な問いが頭を駆け巡るが、好きなものは仕方がない。猫はやっぱり黒だ。ココすけ、ごめん、と思いつつ、くろねこ愛は止まらない。

何度か見かけた後、そのくろねこ様が登場しなくなり、焦った。ひょっとして貰い手が見つかった?そうよねあんなに黒くてデカいもふもふの猫、みんな欲しくなるよね!おまけにあの子、目が寂しそうだった。。。うわぁぁぁん、しまった、さっさと唾つけとけばよかった。。。誰だよ、私のくろねこ様を掻っ攫ったの!許せん!いや、もっと許せないのは決断できなかった自分だ。あのくろねこ様、私じゃない誰かにゴロゴロしちゃうわけ?絶対イヤー!などと、枯れかけた嫉妬心が燃え盛る。

しょんぼりした気持ちで、念の為、保護団体にその猫のことを聞いてみた。

「あの黒い子?いますいます、ちょっと体調崩してて。まだ保護施設でいますよ〜。」

ええっ、まだいるの!? 信じられない、みんなくろねこ好きじゃないの??引き取る引き取る、一生、大事にする!だからヨメに、、、じゃない、ウチの猫になってちょーだい!!オレより先に寝ても、後に起きてもオッケーです!!メシはうまいのあげる!!いつも汚くてもいいから!!!できる範囲でダラダラして!!などと、どこかで聞いた歌詞のパロディが脳内再生される。

保護団体様に連れられて我が家にやってきたくろねこ様は、それはそれは人懐っこい甘えん坊で、ケージから出た直後、なぜかぎゅうぎゅうと私の懐に潜り込むように顔を押し付けてきた。うんうん、寂しかったんだよな、抱きしめてほしいよな。もう大丈夫、私がずっと一緒にいてあげる!! かわいいな、肉球でかいな(当社比)、もふもふだな。

さて、いつものごとく、名づけで揉める。クロ(まんまだろ!)、ノアール(おフランスって柄じゃねーだろ!)、、、結局、最後には娘の意見が通る。「じゃ、黒いから、インクで」。直球で来たな。よろしい。私史上、最大の肉球を持つ男、インク。我が家初のオス猫様だ。お日さまの光に透ける黒いもふもふの毛がかつての愛猫・セラを思い出させる。虹の橋を渡った私の美しい黒い猫。セラは優しかったから、私がどんな猫たちを引き取っても、きっと生暖かく見守ってくれると思う。

かくしてインク様は今やココすけと果てしない縄張り争いを繰り広げつつ、なんだかんだと幸せそうに我が家で暮らしている。元野良のせいなのか、インク様は脱走癖がおありだ。既にマンション内で有名人猫である。強固なバリケードを破ってマンション内を彷徨うこと数回。夜中に他家に押し入ってリビングで熟睡したという強者である。仕方なく時々ハーネスをつけて散歩に出る。マンション内のエレベーターでご一緒した方に「黒々しとる、、、」と呟かれる。誇らしい。いやいや、それ猫に対する形容詞ちゃうやんか。散歩の道すがらカラスと威嚇し合うのはやめろと思う。黒ー黒対決で大変である。それどころかちょっと目を離した隙にスズメを捕獲しやがった野生の男だ。デブ太めなのにジャンプ力あるんや。散歩していると大体すれ違う人に2度見される。どんなに黒くても、でかくても、所詮、猫である。ええ、変ですよね。わかってます。夜は同衾。鼻炎持ちの彼に、夜中、盛大なくしゃみと共に鼻水を顔面にかけられる。もー、勘弁してよー、、、くそぅ、でも好き!どうしたらいいんだ。騒がしいインク様に夢中♪