女性 PI として、あるいは一人のフルタイムマザーとして、何が一番つらい(足枷)かと聞かれると、実は自分の心理的バリアーかもしれないと長年思っている。責任のあるポジションについている女性は、家事や子育ての大半をヨメに押し付け、、、もとい、「依頼」できる男とは違い、フィジカルにもメンタルにも負担とストレスの量が半端ない。少なくとも私はそう思っている。正直に書くと、この件については非常にネガティブな気持ちになるので、文章にしたくないぐらいである。

私には二人の子供がいるが、今はすでにどちらもティーンエイジャーになったので、少なくとも子育ての重圧からは徐々に解放されつつあるが、小さい頃は「ごめんね」と思いながら働いていた。晩ご飯が遅くてごめんね。晩御飯のあとぶっ倒れててごめんね。朝ごはんが適当でごめんね。授業参観忘れててごめんね。エンドレスである。

男どもは知らないだろうが、女性が「ごめんね」と思うのは子どもにたいしてだけではない。親に対しても、パートナーに対しても、申し訳なく思っていることが多い。これは自分では解決することが難しい、日本で生まれ育った私が逃れられない「呪い」だと言っても過言ではない。出張にいくときも、夜遅くなるときも、同僚との飲み会も、「ごめんね」と思いながら行く。そんな自分が嫌になり、腹立たしく思うが、どうしようもない。私はそのように生まれ育った。なんでゴメンやねん、何が悪いねん、と心で毒づくが、罪悪感は消えない。私は女性として家族に尽くすことをある程度期待されている社会に育った。幸運なことに私の親はそのような価値観を自分の娘に押し付けることは稀であったが、それでも、有形無形の社会からの刷り込みから逃れることは難しい。自分のために生きることは、それとは対極にある。その呪縛を断ち切るのには、かなりの意思の力が必要なのである。

将来、私の娘や、その友人たち、すべての女性が、この呪縛から自由になれればいいと心から思う。とはいえ、そんな日が本当にくるのか、甚だ疑問である。とりあえず、息子の家事能力をあげるということぐらいしか思いつかない。こいつの将来のパートナーが心置きなく海外出張に行き、風邪をひいても安心してぶっ倒れることができる、というぐらいの人間に育てるのが、私のとりあえずの目標だ。娘もしかりであるが、自分の経験からいって、娘には逆のストレス(あるいは励まし)をかけたほうがむしろいいんじゃないかと思う。

世の親たちに大声で言いたい。息子の生活力をあげよう!!娘の経済的自立を励まそう!
他人を尊重し、一人で行きていける人間に子供たちを育てることが、いわゆる男女協働なる社会を目指すための一番の早道じゃないかと思う。