たいていの働く母親は長期休みが大嫌いである。私もその一人だ。辛いことは多々あるが、その筆頭が義理実家訪問である。義理母が亡くなって4年、義理実家は静かに汚屋敷化が進行している。義理父は悪い人ではないが、とにかくこの世代の男の生活力のなさはハンパない。35度を超える屋内でコバエと戦いながら掃除をするのは苦行である(クーラーはダニだらけと思しきリビングにしか設置されていない)。

今年はお盆を避けて夏休み突入と同時に訪問したが、それでも暑いことには変わらない。冷蔵庫にあるモノの大半は3年以上前に賞味期限が切れており、かたっぱしから捨てた。カビが生えたまま冷凍されている餅など、イミフである。3年間洗ってないキッチンマットも「念入りコース」で洗う。ジェンダーを呪いたくなる数少ないシーンである。夫はひたすらゴミ出し。「情けは人のためならず」と100万回つぶやく。庭でボウフラ飼育器と化している「ため水」の処理は諦めた。蚊に刺されるスピードは一箇所/秒である。玄関先は、義理父が道楽でやっている家庭菜園から採れたクズ野菜置き場になっており、ゴキブリが徘徊している。靴を脱ぐのをためらうレベルだ。納屋に備蓄されていた大量のペットボトルとカンゴミも処分した。

ここにくるたびに、有形無形で日本社会から甘やかされることになる息子の生活力を鍛えねばと心の底から思う。飯を作れない人間など、他人と一緒に暮らす資格は1ミリもない(彼が生涯にわたり一人暮らしをする、もしくは完全に家事を外注できる収入を得ることができれば話は別であるが)。息子は極度のダニアレルギーで、体調を悪化させて帰途につく。いつもの光景である。正月にはいかないと固く決心するが、来年の夏もまたくることになるのだろう。