なんだなんだ、このタイトルは、と思われることだろうが、これは私がこの世で最も嫌いなものの一つである。

子供向けの科学漫画から、果てはついこないだラボに放置されていた某企業が出している「ゲ×ムに夢○」というショートコミックまで、世の中にはーーーあるいは日本にはーーー「オッサン教授(もしくはイケメン先生)と美人助手がいるラボ(または講義)に行って教えを請う善男善女」という設定の科学コミックが溢れている。

大声で叫んでおくが、私はこの手の設定が大嫌いだ。

バカバカしくて嫌になる。大体すでに「助手」はいない。助教(Assistant prof)です。しかも決まって判を押したようにワンレンタイトスカートヒールが低めのパンプスを履いている。美人助手の3種の神器である。なんだよこれ、どこのどいつがこんなのを定型化したんだ。怒りのあまり口汚くなってしまう。それともこれは手の込んだジョークなのか?

フン、うちなんか、お掃除サービスと間違えられてしまう女性教授(もちろん私だ)と、マイルドヤンキーにしか見えない男性秘書という異色の取り合わせだぜ!!生命機能研究科で異彩を放っていると言っても過言ではない。

まあそれはさておき、こんなの子供の頃から見せられたら刷り込まれちゃうよなと思う。イケてなくても、おっさんになっても、教授たるものワンレンの美人助手がもれなく付いてくるーーーと本気で思わないとは思うが、なんとなくイメージが形成されてしまうのだ。これを刷り込みと私は呼んでいる。

オッサン教授がご高説を垂れ、美人助手が「センセイ、準備できました!」などと言わされている。女をバカにするのも大概にせぇよと思う。最近はさすがにあからさまなオッサンアゲは設定として薄れてきたが、それでもそこはかとなく美人助手が「仕える」感じは払拭できない。

子供の本棚にいまだに並ぶ科学漫画を読むたびにイラっとくる。腹がたつのでこの手の科学本は避け、無難にドラえもんやらを選ぶようにしていたが、それはそれで他力本願なのび太にムカついてこれまたイラっとくる。世の親御さんたち、のび太にイラっときますよね?一方、自分は真っ昼間からテレビみてのんびりしているくせに、宿題しないのび太に罵声を浴びせるのび太の母・玉子にもイラっとくる。うちの息子(小6)だって「のび太の母は昼間、何してんのよ?」と言っていたぞ。サザエさん、クレヨンしんちゃん、ドラえもん、ちびまるこちゃん、の設定は昭和ファンタジーが溢れてて痛すぎる。時代はすでに令和だぞ。

話がずれた、オッサン教授と美人助手が溢れる世界の醜さだ。じゃあどんな設定だったらオマエは納得するのかと聞かれると、これまた答えは出ない。オバサン教授とイケメン助手だってあざといと思ってしまう(そういう設定が羨ましいと思ったのは内緒だ)。もう面倒臭いから中性で良くない?いっそ AI に教えを請えばいいじゃないか。実際レクチャーなんてそのうち AI に置き換わるに違いない。それはそれで無機質なつまらない社会だ。じゃあおっさん教授でいいのか。うんうん唸るが答えは出ない。実際、理系分野の教授なんかほとんどおっさんだ(私だって中身はほぼおっさんだ)。それのどこがいけないのか?

多分、究極的には生きづらさ、じゃないかなと思っている。画一的な世界で、マイノリティは生きづらい。価値観を異にする同僚と組織運営なぞ、やりにくいことこの上ない。その異なる価値観を擦り合わせて、多様な生き方や考え方も許容できる社会を目指すのが、より多くの人にとって息がしやすい組織を作る基盤になるんじゃないかなと個人的には思っている。

(後日談1:マイルドヤンキーな男性秘書は退職しましたが、多足の草鞋を履く彼の会社にラボサーバー・HP メンテなどを委託しています)

(後日談2:久しぶりにキューピー3分クッキングを見たら、若いおにーちゃんがイケメン男性料理講師に料理の教えを乞うていた。おっさんと美人助手の世界が変わりつつあり、ほのぼのと眺めてしまった。どうでもいいがアメリカあたりだったら、キューピーは赤ちゃんに対するセクハラだとか言われそうで、他人事ながらヒヤヒヤしてしまうボヘミアンな私)