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生体ダイナミクス講座

生理学研究室

倉橋 隆 教授 倉橋 隆 教授

キーワード:

電気生理学、情報変換、イオンチャネル、嗅覚

緻密な電気生理学でシグナル情報伝達機構を解明する

私たちは、生体内のナノレベル構造体における細胞・分子間のシグナル情報伝達機構について研究を進めている。研究室では、特に以下の点に焦点をあてている:分子動態の実時間測定、パッチクランプ法などの専門的技術を用いた電気生理学、カルシウムイメージングなどの蛍光染色を用いた微細構造体の可視化、酵素活性の実時間測定などの生化学、サブミクロンサイズの細胞小構造内でのケージド化合物の光乖離、コンピューターシミュレーション、実験目的に応じたアナログ回路などを用いた電子機器の製作・適用などである。ナノレベルの生体構造体のシステムモデルの1つとして、直径が100nm(長さ10μm)程度である嗅細胞の線毛があげられる。私たちは、この極細構造体内のアデニル酸シクラーゼの酵素活性やcAMPやCa2+のメッセンジャー因子の動態を実時間で測定し、定量化した。上記の技術を用いて得られた定量的なパラメータは私たちの嗅覚と密接な関わりを持っている。さらに、私たちは嗅覚マスキングやワインのコルクテイントが生じる分子メカニズムを明らかにした。このような生きたナノレベルの微細構造を用いた実験系を通して、私たちは実験テクニックや理論、ソフト/ハードウェアの開発を発展させ、新しく開発したマテリアルを生体微細構造体システム分野のみならず、まだ適用されていない分野の体系的な解析に応用したいと考えている。

神経細胞のモデルとしての嗅細胞の情報変換分子カスケード

メンバー

倉橋 隆 教授 kurahashi.takashi.fbs[at]osaka-u.ac.jp
竹内 裕子 准教授 takeuchi.hiroko.fbs[at]osaka-u.ac.jp

研究者の詳細を大阪大学研究者総覧Research Mapで検索できます。

  • ※メールアドレスの[at]は@に変換してください

Q&A

現在注目しているテーマは何ですか?
「見えないものを見つけ出す」多くの研究者や学生は、電気生理学について「難解だ」「時代遅れだ」という印象を持っていると耳にすることがある。しかし、それは間違いである。理論と実践を身につけると生細胞を用いる研究において強力な武器となり得ることを実感できていない者が多く、彼らは電気生理学が時代と共に進化していることを知らないだけなのである。電気生理学の理論と実践は表面的な部分からコアの部分まで段階的なレベルを有し、その真髄は軽々と理解し、身につくものではないため、益々敬遠される傾向にある。本研究室では、これまで数十年間培ってきた電気生理学の知見をもとに、市販品だけを使っている限り見つけることができない事象を見つける。主に、感覚神経細胞を試料として用い、イオンチャネル活動を解明することがテーマである。感覚神経細胞のモデル細胞として使用している嗅細胞は、直径100-200nmの線毛上に高密度に発現しているイオンチャネルの動向、微細空間内での分子挙動、入出力システムの解明、細胞間シグナル伝達、ヒト感覚との対応と、多用なテーマを含み、未解明の事象も多い。
最新のブレイクスルー、研究成果について教えてください。
嗅覚研究から見つかった知見は基礎研究だけではなく、日常生活や臨床医学や産業と広い分野で幅広く使用されている。これは社会からみたニーズが高いことを意味する。近年、五感を中心とした個人の感覚が重要視されており、その中でも嗅覚は最もファジーな感覚として知られている。過去の研究では、嗅細胞を研究試料として取り扱うことや、生きた嗅細胞に対する実験手技が困難であり、研究が進んでこなかった。しかし、本研究室では電気生理学をベースにしていくつかの手法を組み合わせることにより、定量的な解析を行うことを可能としてきた。人間の歴史において経験的に感じていたことを、イオンチャネルや分子の働きで、数値やシステムを使って説明可能としてきた。ここ5年間では、私たちはナノ生体構造体内の分子ダイナミクスや、イオンチャネルの活性化と不活性化、サブpAレベルの電流解析に注目している。キーワードは、嗅覚情報変換機構、嗅覚順応、嗅覚マスキング。詳細は論文や著書を参照されたい。
どのようなバックグラウンドを持つメンバーで研究をすすめていますか?
メンバーのバックグラウンドでの共通項は電気生理学である。パッチクランプ法は必要最低限の共通理解である。その他は、各自の特性を活かした方向性で研究を行っている。例えば、機械工作、電子回路工作、プログラミング、細胞取扱、光解離物質調整など個々の適性は多岐にわたる。
国内外の研究機関との連携について教えてください。
国内外をあわせて考えても、同じ系統の実験系を行っている研究室は少ない。国内よりもむしろ海外研究室とのインタラクションが多く、研究に関する議論、共同研究などは日常的に行える状況である。特に、アメリカ、台湾、イタリア、オランダ、ドイツの諸大学との関係が深い。
研究室から巣立った人たちはどのような道を歩まれていますか?
研究室の卒業生の主な進路には、京都大学医学研究科(現:大阪大学大学院医学系研究科助教)、サントリー、資生堂、島津製作所、P&Gジャパン、ヤマハ株式会社、高砂香料工業、関西電力、三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)等がある。
今後どんな展開が期待されますか?
生理学はリアルタイムで様々な細胞の生きた挙動を追うことが可能であり、電気生理学は生体機能を知るためには強力で有用なツールである。本研究室のターゲットは、イオンチャネルとその生理学であり、多角的な視点で電気生理学を用いることが必要である。電気生理学を使って「見えないものを見つけ出す」ことは、今後の重要な課題の1つであり、嗅覚情報変換におけるイオンチャネル特性解明も、そのテーマの1つである。

研究成果

論文、総説、著書

2023年

Takeuchi H, Kurahashi T

Segregation of Ca2+ signaling in olfactory signal transduction

J. Gen. Physiol. 155(4):e202213165.  2023 PMID:36787110 DOI:10.1085/jgp.202213165.

2019年

Takeuchi H, Kurahashi T

Suppression of olfactory signal transduction by insecticides

npj Science of Food 3:09  2019 PMID:31304281 DOI:10.1038/s41538-019-0042-z

Tamari K, Takeuchi H, Kobayashi M, Takeuchi K, Kurahashi T, Yamamoto T.

Electrical properties of cells from human olfactory epithelium

Auris Nasus Larynx. 46(5):734-741.   2019 PMID:30850172 DOI:10.1016/j.anl.2019.01.006.

2018年

Takeuchi H, Kurahashi T

Second messenger molecules have a limited spread in olfactory cilia.

J. Gen. Physiol. 150(12):1647-1659  2018 PMID:30352795 DOI:10.1085/jgp.201812126

NEWS

求める人物像(学生の方へ)

当研究室の研究内容に興味があり、研究をしたいという強い意欲のある方。生き物が好きな方、細かな手作業やモノづくりが好きな方も歓迎します。出身大学や出身学部は一切問いません。

連絡先

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-3
大阪大学大学院生命機能研究科 細胞棟3階 生理学研究室
TEL: 06-6879-7979
E-mail: kurahasi[at]bpe.es.osaka-u.ac.jp(倉橋 隆 教授)

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