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2023.8.9 その他 「生物だけじゃなく物理や数学の視点からも」(高校生向けサイエンスツアーより)

日時 2023年8月9日(水)
学校名/参加人数 兵庫県立神戸高等学校/48名

今年は高校生向けの科学体験ツアーがかえってきました。実習をとおして「研究」のおもしろさを感じてもらおうと2008年に平岡泰名誉教授がはじめたもので、2019年まで毎年開かれていました。コロナ禍で途絶えて以来4年ぶりの開催です。「生命」の「階層性」をカバーするように幅広い分野の研究者が集う当研究科の特徴を活かしたプログラムで、分野を超えて「サイエンス」を体験していただきます。

このたびは以下の七つのコースが用意され、そこから二つを選んで体験するというものでした。

  1. 生きている細胞を蛍光でみる
  2. バクテリアの泳ぎと形を光学顕微鏡と電子顕微鏡で拡大して見る
  3. 生きた細胞の中のタンパク質1個の動きをみる
  4. 機能的MRIによる脳活動計測・解析
  5. 光の物理から量子力学へ
  6. 動物の模様ができる原理を、数学を使って考える
  7. ホヤの脳の発生と神経活動の操作

あなただったらどの二つを組み合わせるでしょう?

生きている細胞を蛍光でみる

細胞の中で起きていることをあるがままに見よう!ということで、このコースではヒト細胞に導入した蛍光タンパク質が動く様子を蛍光顕微鏡で観察します。細胞小器官の構造などを観察できる超解像顕微鏡も登場します。タイミングが合えば細胞が分裂するのを見ることができるそうです。

バクテリアの泳ぎと形を光学顕微鏡と電子顕微鏡で拡大して見る

1マイクロメートル程度の単細胞生物であるバクテリアはどのように水の中を泳ぐのでしょうか?このコースでは、その様子を観察し、さらにそのしくみについて考えます。

生きた細胞の中のタンパク質1個の動きをみる

10ナノメートル程度のタンパク質ひとつひとつは、生きた細胞の中でどのように動いているのでしょうか?このコースでは、細胞性粘菌の中のタンパク質ひとつの動きを見る方法を考えます。

機能的MRIによる脳活動計測・解析

私たちヒトの知覚体験と脳活動の関係はどのようにして調べられるでしょうか?脳の研究を支えるMRI(磁気共鳴画像装置)について理解を深め、そのデータを解析してみます。

光の物理から量子力学へ

生命科学でもさまざまな分析を可能にする「光」。波でありながら粒子でもあるって?偏光板を用いた実験で、量子力学(ミクロの世界の自然法則)への理解を深めます。

動物の模様ができる原理を、数学を使って考える

魚もカブトムシも、貝も、動物のかたちはどのようにできてくるのでしょう?模様を例に、数理モデルで空間パターンをつくってみて、そのしくみについて考えます。

ホヤの脳の発生と神経活動の操作

脳はどのようにつくられるのでしょう?どのようにして働くのでしょう?ひとつひとつの神経細胞をみたり、いじったりして考えます。

さまざまな研究室

二つ選ぶとしたらどのコースだったでしょうか?このたびコースを担当した研究室は七つでしたが、当研究科の基幹講座には全部で23の研究室があります。このたびは参加しなかった研究室も合わせて、どのような分野があるのか紹介します。

たとえばコース「1」と「3」を選んだ「ライブイメージング」派なら、1分子生物学研究室、幹細胞恒常性システム研究室、免疫細胞生物学研究室にも興味がわくかもしれません。対象とする生体分子や生命現象はさまざまですが「生きている」状態でよく調べるという共通点があります。「2」を外せなかった「ナノマシン」派なら、生体機能分子計測研究室の研究も見逃せないでしょう。

とにかく脳に興味があって「4」と「7」を選んだなら、1細胞神経生物学研究室、心生物学研究室、知覚・認知神経科学研究室、ダイナミックブレインネットワーク研究室でしょうか。数学や物理が大好きなひとは、このたびのコースを担当したパターン形成研究室の他、光物性研究室、ナノ・バイオフォトニクス研究室、生理学研究室にも心惹かれるかもしれません。

(数学はともかく)「発生」が好きで「6」を選んだのなら、エピゲノムダイナミクス研究室、生殖生物学研究室、初期胚発生研究室、幹細胞・免疫発生研究室の研究に向いているかもしれません。「細胞の中」に心惹かれて「3」を選んだなら、染色体生物学研究室、RNA生体機能研究室、ミトコンドリア動態学研究室、細胞内膜動態研究室、ユビキチン生物学研究室の研究も見てみてください。

また、このたびのコースのテーマにはありませんでしたが「創薬」など「医学」にも興味のあるひとは、医化学研究室や組織生化学研究室で臨床応用をめざすのも良いかもしれません。

限界を越え、あらたな分野を開拓する

仮にいくつかのグループに分けてしまいましたが、分け切れるものではなく、互いに関係があります。当研究科は「生命」を理解するために医学・基礎工学・理学部・工学の幅広い学問領域の研究者が集ってできました。分野を超えてさまざまな手法を駆使し、あらたな分野を開拓しようとしています。

このたびの体験で「生物だけじゃなく物理や数学の視点からも生命機能を捉えることに感銘した」という感想もいただきました。まさに、そのとおりで平岡泰名誉教授が伝えたいのは「限界は越えられる」ということでした。

当研究科ではスーパーサイエンスハイスクール指定校など、府内外の高等学校向けに随時、研究室紹介を行なっています。研究室独自のプログラムを通して科学、研究への理解を深めていただきます。

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