FBSコロキウム 237回ビルディングブロックサイエンス共同研究講座
講演 |
積み木の科学による生体外細胞操作:創薬研究・再生医療に向けたLbL-3D生体組織の構築 明石満[ビルディングブロックサイエンス共同研究講座] |
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日時 | 2020年1月16日(木)12:15~13:00 |
場所 | 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室 |
言語 | 日本語 |
世話人 |
赤木隆美(ビルディングブロックサイエンス共同研究講座) |
積み木の科学による生体外細胞操作:創薬研究・再生医療に向けたLbL-3D生体組織の構築
積み木(ビルディングブロック)を組み立てる要領で、高分子を巧みに使って様々な材料が生み出されている。我々は、高分子間の相互作用を利用した交互積層法(Layer-by-Layer: LbL法)を活用し、様々な機能性高分子、バイオマテリル研究を展開してきた。また、細胞を物質、材料と捉え、LbL法による新たな細胞操作技術を開発し、2004年に始まった大阪大学21世紀COE「細胞・組織の統合制御にむけた総合拠点形成」(拠点リーダー:仲野徹教授)の中で、多種細胞からなる三次元生体組織を構築する技術開発に取り組んできた。ヒト由来細胞を用いて生体外操作によって構築される三次元組織モデルは、創薬研究支援ツール、再生医療のための移植組織として有用である。細胞外マトリックス(ECM)タンパク質をLbL法によってECMゲル薄膜で細胞表面を覆うことで、高い細胞生存率を維持したまま三次元生体組織(LbL-3D組織)が構築できる。本手法を用いることで、血管網様構造を有する皮膚、心筋、肝臓、膵臓、腹膜、口腔粘膜モデルなど、様々な臓器モデルの構築を達成している。皮膚、心筋モデルに関しては、安全性評価、創薬研究のための動物実験代替法として、国際標準化のための研究を推進している。血管構造を有するLbL-3D組織は、移植後、高い組織生着率を示すことから、再生医療のための移植組織片としての活用が期待される。また、LbL-3D組織の実用化に向けて、組織製造の安全性と再現性を担保するための全自動製造システムの構築にも取り組んでいる。医学研究科と歯学研究科院生の学位研究としても進められているが、今回は、基本となるLbL-3D組織の構築、創薬研究・再生医療としての応用、産業化への取り組みについて概説する。