2024.12.19 受賞・報道 井上大地教授が日本学術振興会賞を受賞
がん病理学研究室の井上大地教授が第21回(令和6(2024)年度)日本学術振興会賞を受賞することが発表されました。
日本学術振興会賞は「創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者を見い出し、早い段階から顕彰することで、その研究意欲を高め、研究の発展を支援することにより、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させること」が目的とされています。
以下に授賞理由を掲載します。
「転写後制御異常による新規発がん機構の解明」
(Elucidation of the Mechanisms Underlying Cancer Development via Aberrant Post-transcriptional Regulation)
井上大地氏は、染色体異常やタンパク質コード領域の変異の枠を超えた発がん機構について精力的に研究を進め、がん細胞ではがん特異的なRNAスプライシング異常が生じ、転写後制御の障害が直接的にがん化に寄与するという機構を、世界に先駆けて報告した。特に、独自に開発したアルゴリズムにより、イントロン変異がmRNA分解を誘発し標的遺伝子の機能低下を来す現象を、ゲノムワイドに捉えたことは、大きな発見である。一連の研究成果は、がんでしばしば観察されるマイナーイントロンスプライシング異常の研究へと発展し、その発生機構と病理的意義を解明した。 井上氏があげてきた研究業績は卓越しており、患者検体、様々な病態モデル動物、数理モデリングなどを組み合わせて研究を進める学際性は特筆に値する。がん生物学、機能ゲノミクスについての基礎医学のみならず、これを応用する臨床医学にも深い見識を兼ね備えた類まれなリーダーとして、今後更なる発展が期待される。
授賞式は、令和7年2月頃に日本学士院において行われる予定です。