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FBSコロキウム 201回パターン形成研究室

講演

膜電位を介した器官サイズスケーリング機構

荒巻敏寛[パターン形成研究室]

カブトムシの収納術

松田佳祐 [パターン形成研究室]

日時 2018年12月5日(水)12:15〜13:00
場所 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
世話人

近藤滋(パターン形成研究室)
Tel: 06-6879-7975
E-mail: skondo[at]fbs.osaka-u.ac.jp

膜電位を介した器官サイズスケーリング機構

動物の形態形成について、初期胚での研究は進んでいるが、一方で成体のプロポーションがどのように決められているかに関する知見は現在でも極めて乏しい。脊椎動物の場合、一般的には成体の形態は骨の形態に依っていると考えられているが、我々は独自に改良したトランスジェニック技術を用いて、ゼブラフィッシュのヒレの長さと、ヒレ骨の長さがそれぞれ独立に制御されていることを見出した。過去の変異体の解析から、興味深いことに、ヒレの大きさの制御にイオンチャネルが関与していることが報告されている。K+チャネルの機能亢進はヒレ、およびヒレ骨の伸長を引き起こし、またコネキシンの機能低下は逆に両者の短縮をもたらす。K+チャネルやコネキシンはいずれも細胞の膜電位に関与することが知られており、細胞が器官の大きさを「測定する」のに、電気的な原理を使っていることが推測される。我々はこの機構の解明を目指し、まず膜電位変化に感受性を持つ細胞種の特定を試みた。意外なことに、表皮細胞でのみK+チャネルの機能を亢進させたところ、ヒレの伸長は起こるが骨の長さは正常のままであった。また、骨芽細胞でのみコネキシンの機能を抑制した場合には逆に、ヒレの長さは正常であるにも関わらず骨だけが短縮した。さらにこれらの条件を組み合わせたところ、ヒレは長いが骨は短い魚が生じた。この結果が示すものは、ヒレ全体の大きさと、骨の大きさの制御には膜電位を介した共通の機構が用いられているが、制御自体は完全に独立しているということである。

カブトムシの収納術

カブトムシは、子供に人気のある昆虫の代表格である。人気の理由は、もちろん、頭と胸にある「大きくてかっこいい」角だ。特に日本のカブトムシの角は、先端が4つに分岐しており、これは、外国産のものにはあまりない特徴である。我々のグループは、この日本産カブトムシの角の形態が、どうやってできるかを研究している。カブトムシの角は、発生の過程で、だんだん大きくなるのではない。カブトムシの幼虫には角は無いが、蛹になる過程(蛹化)で、突然、出現する。蛹化が終了するまでのわずか2時間の間に、あの大きな角が現れるのである。このような突貫工事を可能にしているのは、どのような仕組みだろうか?これまでの研究で私たちは、この突貫工事を可能にしているのは、「蛹の角がすでに完成した状態で折りたたまれて、幼虫の頭に入っているからである」ということを示した(Matsuda K. et al. 2017)。つまり、蛹の角という非常に大きな構造が、複雑に折りたたまれることで、幼虫の頭という小さなスペースに収まっているのである。では、角原基はどのように折りたたまれているのだろうか?その折り畳みのロジックは?これらは、物理的な「詰め込み問題」としても、それを利用する生物の戦略、という点でも、非常に重要な問題である。私たちはこの問題に取り組むため、角原基の折りたたみをスムージングなどのメッシュ操作手法を活用して詳しく観察し、さらに、その折り畳みを一部模型で再現することで、角の折り畳みロジックを明らかにしてきた。今回のコロキウムでは、最近得られた知見も含めて、これまで近藤研で行ってきたカブトムシの研究について紹介する。

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