SEARCH

PAGETOP

FBSコロキウム 202回生体機能分子計測研究室

講演

大腸菌走化性と細胞内タンパク質動態の1細胞同時計測

福岡創[生体機能分子計測研究室]

大腸菌受容体クラスターの一分子的かつ自発的な活性化、不活性化の再現

濱元樹[生体機能分子計測研究室]

日時 2018年12月19日(水)12:15〜13:00
場所 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
世話人

福岡創(生体機能分子計測研究室)
Tel: 06-6879-4429
E-mail: f-hajime[at]fbs.osaka-u.ac.jp

大腸菌走化性と細胞内タンパク質動態の1細胞同時計測

大腸菌は走化性システムと呼ばれる情報伝達系によって外環境を認識・判断し、それに応じて運動装置であるべん毛モーターを制御し、自身にとって好ましい環境へ移動する。我々は、大腸菌1細胞の走化性応答を高時間・空間分解能での計測、走化性タンパク質の細胞内動態の計測を行っており、ミリ秒で起こる細胞応答や細胞内のタンパク質の結合・解離や酵素活性の定量的な解析から、細胞内の情報伝達のメカニズムを生物物理学的観点から理解しようと考えている。最近の研究で、外部刺激のない定常状態において、受容体から発せられたCheY-P濃度のダイナミックな増減が細胞内を伝搬し直接べん毛モーターを同調的に制御することを提言した。即ち、大腸菌は外部刺激が無いからといって走化性システムを休ませている訳ではなく、自発的にレセプターを活性化/不活性化させ、CheY-P濃度のダイナミックな増減を産み出し、べん毛モーターの回転方向を変えて細胞遊泳を制御していることになる。しかしながら細胞極には10,000分子以上レセプターが存在し、それらが全くランダムかつ確率的に活性化した場合、細胞内のCheY-P濃度の増減はおこらず、ある値に平均化されてしまうはずである。上述のようなCheY-P濃度のダイナミックな増減を生みだすためには、10,000分子以上が集まったレセプターがレセプタークラスター内部の協同性によってあたかも巨大な少数の分子のように振る舞う(1分子のレセプターの活性化および不活性化が10,000分子のレセプター全てに伝搬する)ことが想像される。本コロキウムでは、生命の情報伝達システムを定量的に明らかにするために、1細胞運動解析、蛍光イメージングを用 いた最近の研究成果について紹介する。

大腸菌受容体クラスターの一分子的かつ自発的な活性化、不活性化の再現

近年の研究で大腸菌の同一菌体上の二つのモーターの回転方向が刺激のない定常状態において同調的に制御されていることを発見した。このようにモーターの回転方向を同調的に制御するにはシグナル伝達分子の濃度を急激に上昇、下降させることが必要であると考えられる。しかしながら、そもそもなぜ刺激がない状況下でシグナル伝達分子の濃度が急激に変化するのかを説明されるモデルは提唱されていなかった。私たちは、受容体クラスターの高い協同性に加え、受容体個々の感度を調節する受容体のメチル化・脱メチル化を考慮することで自発的な活性化・不活性化を再現することに成功した。受容体個々のメチル化・脱メチル化は従来、走化性刺激への適応に用いられていると考えられており、この結果は受容体のメチル化・脱メチル化が果たす新たな役割を示唆している。 

PAGETOP