FBSコロキウム 428回幹細胞・免疫発生研究室
| 講演 |
造血幹細胞ニッチを構成するCAR細胞の形成に必要十分な転写因子は何か? 下山 宜之[幹細胞・免疫発生研究室|技術補佐員] |
|---|---|
| 日時 | 2026年10月27日(火)12:15〜13:00 |
| 場所 | 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室 |
| 言語 | 日本語 |
| 世話人 |
尾松 芳樹 (准教授) |
造血幹細胞ニッチを構成するCAR細胞の形成に必要十分な転写因子は何か?
線維芽細胞は、非血球、非上皮、非内皮、非中皮、非実質細胞からなる分画に属し、細胞外マトリックスの産生を担う細胞の総称であるが、その多様性の分子基盤は十分明らかでない。我々の研究室では、骨髄のCAR細胞(Cxcl12-abundant reticular cell)が、造血幹細胞の維持に必須のCXCL12を高発現し、造血幹細胞ニッチの主要な構成細胞であることを明らかにした。CAR細胞は、その形態的特徴に加え、PDGFRα、Vimentinなど代表的な線維芽細胞マーカーを高発現することから骨髄特異的な線維芽細胞と考えられる。近年では、腸管や肺においても、幹細胞ニッチとして機能する臓器特異的な線維芽細胞が同定され、組織恒常性の維持に必須の役割を担うことが報告されている。その後、Turleyらのグループは、主要組織の線維芽細胞のscRNA-seqデータセットを統合解析し、線維芽細胞が、各臓器に共通する普遍的線維芽細胞(universal fibroblasts)と、臓器特異的な機能を持つ特殊線維芽細胞(specialized fibroblasts)に大別されることを示した。さらに、普遍的線維芽細胞から特殊線維芽細胞が分化する可能性が示され、線維芽細胞にも階層性が存在することが示唆された。実際、我々は、肺および大腸由来の普遍的線維芽細胞が骨髄や筋内への移植によりCAR細胞に分化することを実証した。 これらの結果は、普遍的線維芽細胞が生体の発生過程での前駆細胞であるか否かに関わらず、様々な環境下で多様な特殊線維芽細胞に分化できる可能性を示す。
そこで我々は、普遍的線維芽細胞を用いることによって、CAR細胞の形成に必要十分な転写因子の同定を試みた。はじめに、造血幹細胞ニッチとしてのCAR細胞の形成・維持に必須の転写因子Foxc1およびEbf3を普遍的線維芽細胞に強制発現したが、大部分はCAR細胞に分化しなかった。そこで、他の転写因子が必要であると推測し、CAR細胞が形成過程にある胎生17.5日大腿骨のscRNA-seqを行い、CAR細胞に特異的に発現する15個の転写因子を候補として同定した。
本コロキウムでは、候補転写因子から目的の遺伝子の検索と、2個の転写因子による造血幹細胞ニッチの構成について紹介する。
