FBSコロキウム 427回初期胚発生研究室
| 講演 |
着床後の初期胚におけるサイズ制御機構の解明 増井 大介[初期胚発生研究室|D5/D5] マウス着床前胚における高い膜電位は胚性ゲノム活性化に必要である 荒巻 敏寛[初期胚発生研究室|助教] |
|---|---|
| 日時 | 2026年10月20日(火)12:15〜13:00 |
| 場所 | 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室 |
| 言語 | 日本語 |
| 世話人 |
荒巻 敏寛 (助教) |
着床後の初期胚におけるサイズ制御機構の解明
脊椎動物の成体は、種や系統ごとに固有の大きさをもつ。一方、マウスやカメなどの羊膜類の発生過程にある胚においても、同じ発生段階にある胚は、ある程度共通した大きさを示す。このことは、胚の大きさが単に発生の進行に伴って増加するだけではなく、発生段階に応じて一定の範囲に保たれていることを示唆する。哺乳類であるマウスでは、胚の大きさを調節する仕組み、すなわち「サイズ制御機構」の存在を直接的に示す実験系が報告されている。8細胞期胚を2つ融合して作製した2倍胚は、着床直後まで正常胚の約2倍の大きさであるが、原腸陥入時には正常胚と同じ大きさになる。この現象は約半世紀前に報告されたが、その分子メカニズムは不明である。そこで私は、この実験系を活用して「着床後の初期胚におけるサイズ制御機構を明らかにする」ことを目的とした。これまでに、形態形成や細胞数の変化を解析するとともに、正常胚と2倍胚との間に生じる遺伝子発現の違いを詳細に調べてきた。本コロキウムでは、これまでに得られた知見を報告し、着床後の初期胚におけるサイズ制御のしくみについて議論したい。
マウス着床前胚における高い膜電位は胚性ゲノム活性化に必要である
神経や筋細胞では、膜電位が情報伝達などの重要な機能を担うことが古くから知られている。一方で、胚発生における膜電位の生理機能については未解明な点が多い。受精卵から卵割期にかけてのマウス胚は一般的な細胞と比較して高い膜電位を示すが、発生における機能的意義は不明である。我々は、マウス初期胚における膜電位の機能を明らかにするため、胚の膜電位を人為的に操作する新たな手法を構築した。この手法を用いてマウス受精卵の膜電位を低下させたところ、胚発生は2細胞期で停止した。解析の結果、膜電位低下胚ではクロマチン再編成の遅延と、胚ゲノムからの遺伝子発現の低下が認められ、胚性ゲノム活性化が抑制されていることが示された。また、これらの変化は膜電位を正常化する操作によって回復した。以上の結果から、初期胚の高い膜電位は受精後の胚性ゲノム活性化に必要であり、胚発生の進行に重要な役割を果たすことが示された。
