研究セミナー ゲノムの機能発現と恒常性を支える分子マシンの作動機構
| 講演 | |
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| 日時 | 2026年10月13日(火)17:00〜18:00 |
| 場所 | 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室 |
| 言語 | 日本語 |
| 世話人 |
立花 誠 |
生物は、遺伝情報の担体としてゲノム DNA を保持している。真核生物では、このゲノム DNA はヒストンに巻き付いたヌクレオソームを基本単位とするクロマチン構造を形成している。RNA ポリメラーゼ II (RNAPII) はこのクロマチンを鋳型として遺伝子を転写するが、その機構はヌクレオソームの発見以来、長らく不明であった。我々は、ヌクレオソームを転写中の RNAPII 複合体を再構成し、クライオ電子顕微鏡 (CryoEM) による立体構造解析から、RNAPII がヌクレオソーム DNA を剥がして解体する機構を明らかにした。さらにこの実験系を基盤として、ヒストンシャペロン FACT の働きによってヌクレオソームが解体・再構築される過程を可視化し、転写に伴うクロマチン構造の維持機構を示した。再構築の段階では、異常な転写を抑制するヒストン修飾 H3K36me3 が導入される機構も見出している。加えて、細胞内における転写複合体の実態に迫るため、内在性複合体を抽出して解析する ChIP (chromatin immunopurification)-CryoEM 法を確立し、細胞内で形成される多様な複合体状態について、構造解析による同定を進めている。
転写のたびにヌクレオソームは解体されるにもかかわらず、ゲノム DNA は常にヌクレオソームを形成した状態に再構築される。なぜヌクレオソームは維持されなければならないのか。細胞内では、外来 DNA に対する防御機構である自然免疫 cGAS (cyclic GMP-AMP synthase)-STING (stimulator of interferon genes) 経路が、核内を含む DNA を監視している。我々は、DNA センサー cGAS がヌクレオソームに結合することで不活性化される機構を解明した。ヌクレオソームを形成していることが、自己のゲノム DNA と外来 DNA を区別する目印となることが示唆される。
本セミナーでは、ゲノム DNA が形成するクロマチン構造のダイナミックな変換と、ゲノムの恒常性を担う分子マシンの作動機構について議論したい。
