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FBSコロキウム 418回医化学研究室

講演

相対的ナトリウム利尿ペプチド欠乏はHFpEF前段階の可逆的代謝脆弱性を示す

岡本 千聡[大阪大学大学院医学系研究科 医化学講座 | 助教]

日時 2026年6月30日(火)12:15~13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階セミナー室
言語 日本語
世話人

松岡 研 (准教授)
E-mail: kmatsuoka[at]medbio.med.osaka-u.ac.jp

相対的ナトリウム利尿ペプチド欠乏はHFpEF前段階の可逆的代謝脆弱性を示す

HFpEFでは、特に肥満例を中心に、心負荷の程度に比してナトリウム利尿ペプチド(NP)応答が乏しい「相対的NP欠乏」がみられる。しかし、この状態が無症候期の心筋代謝にどのような影響を及ぼし、HFpEF前段階の病態形成にどのように関与するかは明らかでない。本研究では、無症候者102例を対象に、空腹時心臓18F-FDG PET/CT、心エコー、NT-proBNPを解析し、心筋FDG集積高値にもかかわらずNT-proBNPが一様に低値を示す一群を同定した。さらに、ストレス応答性NP発現が低下するCR9エンハンサー欠失マウスを用いて病態的意義を検討したところ、通常食下で心筋FDG集積亢進、cGMP–PKGシグナル低下、心筋脂質蓄積を認めた一方、ATPは保たれていた。すなわち、NP欠乏心筋では代謝リプログラミングにより代償された、しかし脆弱な状態が形成されていると考えられた。加えて、培養心筋細胞におけるCRISPRiおよび脂肪酸トレーシングでは、NP欠乏により貯蔵中性脂質の動員が低下し、脂肪滴利用障害がこの代謝脆弱性の一因となる可能性が示唆された。高脂肪食負荷ではこの代償が破綻し、ATP低下と重度の拡張障害を伴うHFpEF様表現型へ進展した。さらに、sGC刺激薬vericiguatは代償期の代謝異常と拡張機能異常を改善した。以上より、相対的NP欠乏はHFpEF発症前の心筋代謝脆弱性を規定し、この病態がcGMP経路を介して一部可逆である可能性が示唆された。

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