FBSコロキウム 405回生理学研究室
| 講演 |
数理モデルから見える生体細胞の興奮機構 竹内 裕子[生理学研究室|准教授]/姫野 友紀子[大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点|特任准教授] |
|---|---|
| 日時 | 2026年1月13日(火)12:15〜13:00 |
| 場所 | 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室 |
| 言語 | 日本語 |
| 世話人 |
竹内 裕子(准教授) |
数理モデルから見える生体細胞の興奮機構
イオンチャネル研究はこの100年で進化し続けてきた。1940年代Erlanger, E.J.とGasser, H.S.は神経の興奮伝導を明らかにし(1944年)、1950年代にはHodgkin, A.とHuxley, A.によるイカの巨大神経線維を用いた電位固定法によりナトリウム電流・カリウム電流が電位依存性チャネルを通り活動電位を発生させるメカニズムやEccles, J.による中枢シナプスの抑制性イオン機構が解明され(1963年)、1970年代にNeher, E.とSakmann, B.が開発したパッチクランプ法では単一チャネルからの微小電流記録も可能となり(1981年)、様々な細胞において各種イオンチャネル電流の測定、解析が行われてきた(括弧内はそれぞれがノーベル医学生理学賞を受賞した年)。現在においても電気生理学的手法は依然としてイオンチャネル機能を直接解明するための強力なツールである。一方、近年では、イオンチャネルの開閉や電位変化に加えて細胞内外を行き来する物質やイオンのダイナミクスを計算により予測し、複雑な現象を再現する手法が発展している。本コロキウムでは、イオンチャネルやイオン動向を中心とした細胞機能解明における数理モデルを用いた最新の2研究を紹介する。まず竹内により嗅細胞の線毛上に発現しているリガンド依存性チャネルの電気生理学的実験と、単一線毛内の分子動態が嗅覚へ及ぼす作用についてdigital modelを用いて紹介する。次に姫野により、ヒト心室筋細胞モデルを使用した興奮伝播と不整脈のシミュレーションについて紹介する。イオンやイオンチャネルを介した細胞興奮機構を明らかにする数理モデルの役割について、オリジナルに構築したプログラムを用いて議論したい。
