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FBSコロキウム 402回ダイナミックブレインネットワーク研究室

講演

小細胞性赤核の誤差信号は、到達行動における適応を駆動する

井上 雅仁[脳情報通信融合研究センター|主任研究員]

日時 2025年12月9日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 日本語
世話人

渡邉 慶(准教授)
E-mail:kei_watanabe[at]fbs.osaka-u.ac.jp

小細胞性赤核の誤差信号は、到達行動における適応を駆動する

到達運動における試行ごとの適応は、誤差を補償するために駆動される。我々の最近の研究は、運動皮質と頭頂葉領域が到達運動における試行ごとの適応を駆動する誤差信号を提供することを示した(Inoue et al. 2016; Inoue and Kitazawa 2018)。しかしながら、これらの結果は適応が大脳皮質内で生じていることを必ずしも示唆しない。むしろ誤差信号が小脳に伝達された後、小脳内で適応が生じている可能性が考えられる。第一に、適応は小脳の機能障害によって損なわれる。第二に、誤差信号は実際に登上線維によって符号化される(Kitazawa et al. 1998)。仮説が正しいと仮定すると、大脳皮質からの入力を受け、下オリーブ核へ出力する小細胞性赤核(RNp)が適応において重要な役割を果たしているはずである。この仮説を検証するため、3匹のサルが接線スクリーン上のランダムな位置に現れる視覚標的に向けて急速な到達運動を行う間、RNpの神経活動を記録した。その結果、RNpニューロンの約半数が、運動開始前の標的位置情報および/または運動終了後の視覚的誤差情報を符号化していることが判明した。この結果はプルキンジェ細胞の複合スパイクに関する知見と類似していた(Kitazawa et al. 1998)。RNpにおける視覚的誤差情報の潜時は運動皮質および頭頂葉5野よりも長く、この情報が大脳皮質に由来することを示唆した。次に、運動終了後にRNpへ微小電気刺激を適用した。到達運動と微小刺激を組み合わせた結果、視覚的錯覚誤差の最適方向とは反対側に終点誤差が漸進的かつ有意に増加した。これらの結果は、RNpが視覚的錯覚誤差に関する情報を大脳皮質から受け取り、誤差信号を小脳に送達し、それが最終的に到達運動における試行ごとの適応を駆動することを示唆している。

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