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FBSコロキウム 376回ダイナミックブレインネットワーク研究室

講演

作業記憶の柔軟性を支える神経メカニズム

内村 元昭[ダイナミックブレインネットワーク研究室|助教]

日時 2024年12月24日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 日本語
世話人

渡邉 慶(准教授)
E-mail:kei_watanabe[at]fbs.osaka-u.ac.jp
TEL:06-6879-4431

作業記憶の柔軟性を支える神経メカニズム

作業記憶は物事を「心に留めておく」ことを可能にする能力で、認知機能における中心的役割を果たしている。しかし、その重要性に反し符号化された刺激は不完全であり、時間とともに劣化してしまう。これまでの心理物理学的研究では、記憶の正確さは文脈に依存することが示唆されている。記憶すべき刺激の範囲が広い場合、記憶は不正確になりやすい。一方、刺激の範囲が狭い場合、記憶はより正確になる。これは、作業記憶の脳内表象が適応的であり、その時の文脈に応じて情報を効率的に保持するよう柔軟に変化することを示している。この作業記憶の柔軟性を支える神経メカニズムを理解するため、2頭のサルに作業記憶課題を訓練した。この課題では、上下2つ位置に提示される正方形の色を記憶し、遅延後に指示によって「選択された」方の色を記憶から報告する。刺激は、初めは色円環全体からランダムに選ばれたが、2〜300試行後以降は色円のうち半分のみから選択された。サルがこの課題を遂行している間、前頭前野と頭頂葉から同時に神経細胞活動を計測した。これまでの研究と一致して、刺激の色が選択されうる範囲が狭い場合(半分の色円)の方が、作業記憶課題の成績は正確であった。神経細胞活動を解析した結果、前頭前野の神経細胞が持つ情報量は色範囲が狭い条件で増加した。さらに、選択された色の表象間の神経空間での距離も増大した。これらの結果は、文脈に適応して柔軟に作業記憶の正確さを向上させるための神経表象の変化を示している。

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