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FBSコロキウム 374回初期胚発生研究室

講演

着床前胚のエピブラスト分化過程における細胞運命の指定はTEAD–YAPとNANOGのポジティブフィードバックを活性化させて細胞運命を成熟させる

廣野 尚暉[初期胚発生研究室|大学院生(D4/D5)]

ゼブラフィッシュヒレ骨の分節パターンを生み出す生体電気シグナル

荒巻 敏寛[初期胚発生研究室|助教]

日時 2024年12月10日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 日本語
世話人

荒巻 敏寛(助教)
E-mail:aramaki.toshihiro.fbs[at]osaka-u.ac.jp
TEL:06-6879-4659

着床前胚のエピブラスト分化過程における細胞運命の指定はTEAD–YAPとNANOGのポジティブフィードバックを活性化させて細胞運命を成熟させる

発生過程において、胚の細胞集団は細胞ごとにばらついた細胞分裂や細胞分化、遺伝子発現などを示すが、胚はこれらのばらつきを乗り越えて正常な発生を実現している。どのようにばらつきを乗り越えて正常な発生を実現しているかは発生生物学における大きな疑問の一つである。当研究室では、ばらつきながら分化を起こすモデルとして将来胚体になるマウス着床前胚のエピブラストに注目して研究をしてきた。エピブラストへの分化過程では、NANOGとGATA6の発現の分離とYAPの核移行によるTEAD–YAPの活性化という二つの制御機構が働いているが、これらの関係性は明らかとなっていない。私たちはエピブラストの分化過程において二つの機構がどのように関わり合うことで正常な発生を実現しているのかを明らかにするために研究してきた。本コロキウムではこれらの研究成果を最新の知見とともに紹介する。

ゼブラフィッシュヒレ骨の分節パターンを生み出す生体電気シグナル

魚類のヒレは、一般的には遊泳時に推進力を生み出す役割を持つ。条鰭類の魚では、ヒレは鰭条と呼ばれる細長い骨によって支えられており、それぞれの鰭条は短い骨セグメントが多数連なって構成されている。この構造により、ヒレは強度と柔軟性を両立させ、効率的に推進力を発生させることができる。これまでに、ゼブラフィッシュ変異体の解析によりヒレ骨の分節パターン形成にカリウムチャネルやギャップジャンクションチャネルが関与していることが示唆されていた。本研究では特に骨芽細胞の膜電位に注目し、トランスジェニック技術を用いて膜電位を人為的に操作することでその機能解明を試みた。骨芽細胞の膜電位を上昇させると骨セグメントが短くなり、逆に膜電位を低下させると骨セグメントは長くなった。この結果から、骨芽細胞の膜電位と骨の分節パターンには密接な関係があることが示された。さらに、光作動性陽イオンチャネルであるチャネルロドプシン-2(ChR2)を用いて膜電位を直接操作すると、骨芽細胞の膜電位上昇だけで骨に分節(関節)が誘導されることが明らかになった。加えて、この誘導実験系で骨芽細胞のシングルセル解析を行ったところ、膜電位上昇に応答してカリウムチャネル遺伝子kcnq5、およびギャップジャンクションチャネル遺伝子cx43の発現が誘導されることが分かった。興味深いことに、これらのチャネル遺伝子の機能喪失は個々の骨セグメントの短縮(=関節の増加)を引き起こす。このことから、これらチャネル分子は反復的な分節形成において負のフィードバック調節因子として機能すると考えられる。最後に、カルシウムレポーターGCaMP6sを用いたライブイメージングにより、分節形成中のヒレ骨でカルシウムシグナルの一過的な上昇が観察された。これは骨芽細胞の膜電位動態と骨の分節との関連性を示唆する重要な証拠である。

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