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FBSコロキウム 371回生殖生物学研究室

講演

生殖ゲノムの安定性に重要なpiRNA因子Squashの解析

Xu Xin[生殖生物学研究室|大学院生(D4/D5)]

ショウジョウバエの雌生殖細胞特異的な細胞死制御機構

松井 将也[生殖生物学研究室|大学院生(D5/D5)]

日時 2024年11月12日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 英語
世話人

甲斐 歳惠(教授)
E-mail:kai.toshie.fbs[at]fbs.osaka-u.ac.jp
TEL:06-6850-7971

生殖ゲノムの安定性に重要なpiRNA因子Squashの解析

PIWI結合RNA(piRNA)は、動物の生殖巣において移動性トランスポゾン(TE)の発現を抑制し、ゲノムの安定性を維持するために不可欠である。ショウジョウバエにおいて、piRNAはTE RNAおよびpiRNAクラスターと呼ばれるゲノム領域からのpiRNA前駆体転写物から生じる。これらの前駆体は、ヌアージュ(nuage)と呼ばれる膜を持たない非膜オルガネラ内で、ピンポン増幅サイクルと呼ばれるフィードフォワード型の増幅機構によってプロセシングされ、成熟piRNAが生み出される。ヌアージュには、piRNA生成に重要なさまざまなドメインやモチーフを持つタンパク質が局在している。この中には、PIWIファミリーのタンパク質(AubergineおよびArgonaute3)、RNAヘリカーゼ(VasaおよびSpindle-E)、およびTudorドメインを含むタンパク質(KrimperやTejas)が含まれる。

ショウジョウバエタンパク質であるSquash(squ)は、ヌアージュ局在するタンパク質の1つであるが、他のタンパク質とは異なり、特徴的なドメインやモチーフを持たない。squの機能が損なわれると、雌の不妊や、TEの発現上昇、および卵巣におけるpiRNAの減少などが引き起こされる。しかし、これらの表現型の分子機構は十分に解明されていない。我々の解析により、squ機能欠失によってpiRNA経路因子のKrimperのヌアージュ局在が損なわれること、Ago3の発現が減少すること、そしてAubに結合するpiRNAが減少することが明らかとなった。さらに、Squが卵巣およびS2細胞粗抽出液からRNAヘリカーゼSpindle-Eと共同免疫沈降することが確認され、直接的な相互作用が示唆された。加えて、squ機能欠損によって、42ABおよび38C領域からのpiRNAクラスター転写物がヌアージュ付近に蓄積することが観察され、これらの転写物の処理経路に異常が生じていることが示唆されている。本発表では、SquがpiRNAを介したゲノム防御機構において果たす可能性のある分子機能について紹介する。

ショウジョウバエの雌生殖細胞特異的な細胞死制御機構

アポトーシスは、多細胞生物における発生や組織の恒常性維持に不可欠なプログラムされた細胞死の一形態で、不必要または損傷を受けた細胞を除去する役割を果たす。キイロショウジョウバエにおけるアポトーシスの基本的な機構はよく知られているが、生殖細胞におけるアポトーシスの制御については未だに解明されていない。本研究では、stand still(stil)がアポトーシス促進遺伝子reaper(rpr)の発現抑制を通じて、生殖細胞維持に寄与することを明らかにした。stilは染色体上に局在する35.8kDaのBED型ジンクフィンガータンパク質をコードしている。stilの機能喪失では、羽化時までに卵巣の生殖細胞がほぼ完全に消失し、rprやhidを含むアポトーシス促進遺伝子の発現が増加した。TUNEL標識アッセイにより、stil欠損雌性生殖細胞ではアポトーシス性細胞死を起こしていること確認された。また、ショウジョウバエS2細胞を用いたレポーターアッセイでは、StilがN末端側のBED型ジンクフィンガードメインを介してrprプロモーターからの転写を抑制していることが示された。これにより、Stilがrprの調節領域に結合し、その発現を抑制していることが示唆された。本研究は、Stilがアポトーシスから雌生殖細胞を保護する上で極めて重要な役割を果たしていることを示し、生殖細胞生存の分子機構に新たな知見を提供するものである。

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