SEARCH

PAGETOP

FBSコロキウム 364回RNA生体機能研究室

講演

核内低分子RNAの成熟化に関わるRNAヘリカーゼの同定

谷口 一郎[RNA生体機能研究室|特任助教]

CLK1の温度依存的なリン酸化状態の変化が核内ストレス体の機能発現を制御する

上野 剛志[RNA生体機能研究室|大学院生(D4/D5)]

日時 2024年9月10日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 日本語
世話人

山崎 智弘(特任講師(常勤))
E-mail:t.yamazaki.fbs[at]osaka-u.ac.jp
TEL:06-6879-4675

核内低分子RNAの成熟化に関わるRNAヘリカーゼの同定

RNAは、遺伝情報の伝達、化学反応を進める触媒、細胞内構造体の骨格など、多様な役割を担う生体高分子である。ただし、細胞内でRNAは単独では働かず、その機能を発揮するためには特定のタンパク質と複合体(RNP)を形成する必要がある。このRNP形成を促進するのがRNAヘリカーゼと呼ばれる酵素群である。RNAヘリカーゼの種類が豊富であることから、あらゆるRNP形成に何らかのRNAヘリカーゼが関与していると推測されるが、その関与が不明なRNPも存在する。私たちは、スプライシング反応を担うノンコーディングRNAである核内低分子RNA(U snRNA)に着目した。核内で合成されたU snRNAは細胞質へ輸送されるが、この輸送RNP形成に関与するRNAヘリカーゼは不明であった。私たちは、ヒト培養細胞を用いた生化学的手法とアフリカツメガエル卵母細胞への顕微注入実験を利用して、U snRNA核外輸送に寄与するRNAヘリカーゼを同定した。今回のセミナーでは、研究成果とともに今後の展望についても紹介したい。

CLK1の温度依存的なリン酸化状態の変化が核内ストレス体の機能発現を制御する

核内ストレス体(nuclear stress body, nSB)は、熱ストレスに応答して形成される膜構造を持たない、非膜オルガネラである。nSBは構造骨格であるHSATⅢ長鎖非翻訳RNA(long non-cording RNA, lncRNA)が、スプライシング制御因子であるSRSFファミリータンパク質など、100種類以上のRNA結合タンパク質が集積することで形成される。近年、私達はnSBが熱ストレス回復期において、400種類以上のpre-mRNAのスプライシングを制御することを明らかにしてきた。その分子基盤として、まずnSBは熱ストレスによって脱リン酸化されたSRSFを集積し、温度が正常に戻った熱ストレス回復期にSRSFのリン酸化酵素であるCLK1を局在化させ、前もって集積させた脱リン酸化状態のSRSFを構造体内で効率よく再リン酸化することで、標的pre-mRNAのスプライシングを制御する。言い換えると、nSBは特定の温度条件下で、CLK1によるSRSFのリン酸化を促進する「反応のるつぼ」として機能しており、CLK1の温度依存的なnSBへの局在化は、るつぼ機能の最重要ステップである。本研究では、CLK1が温度依存的にnSBに局在化する分子機構に注目し、CLK1のリン酸化状態の変化がnSBへの局在化に重要であることを見出した。本セミナーでは、これまでの研究成果について発表する。

PAGETOP