FBSコロキウム 362回医化学研究室
講演 |
リンパ球性心筋炎における新規治療法及び診断法の開発 松岡 研[医化学研究室|准教授] |
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日時 | 2024年7月23日(火)12:15〜13:00 |
場所 | 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室 |
言語 | 日本語 |
世話人 |
松岡 研(准教授) |
リンパ球性心筋炎における新規治療法及び診断法の開発
リンパ球性心筋炎は致死性が高く、現在も有効性を示した治療薬はなく、アンメットニーズな疾患である。近年Covid-19を含む重症感染症やmRNAワクチンにリンパ球性心筋炎が合併することが報告されている。更に癌領域で頻用されている免疫チェックポイント阻害剤にも副作用としてリンパ球性心筋炎が発症することから、リンパ球性心筋炎に対する診断・治療法の確立について社会的重要性が増している。そこで我々は心筋炎の新規診断・治療法の開発を目的とした。
ヒトリンパ球性心筋炎症例において、病態早期に活性化線維芽細胞が増加しそれと並行してリンパ球が浸潤する特異的な病理学的特徴が見られたため、活性化線維芽細胞に注目した。心筋炎モデルの1細胞シークエンス解析により、活性化線維芽細胞集団とその集団が高発現しリンパ球を誘導する分子を同定した。更に同分子のリンパ球側のリガンドに対する阻害剤が心筋炎モデルマウスの予後を改善させることを明らかにした。
次にこの阻害剤を放射性核種11Cで標識した新規PETプローブを作製し、心筋炎モデルマウスにおいて心筋に浸潤したリンパ球をPET/CTにより検出することに成功した。本PETプローブは従来の侵襲性の高い心筋生検に代わる心筋炎の低侵襲診断法となりうることが期待される。