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FBSコロキウム 347回ダイナミックブレインネットワーク研究室

講演

前頭-頭頂葉における持続的発火に依存しないワーキングメモリの神経機構

渡邉 慶[ダイナミックブレインネットワーク研究室|准教授]

日時 2024年1月16日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 日本語
世話人

渡邉 慶(准教授)
E-mail:kei_watanabe[at]fbs.osaka-u.ac.jp

前頭-頭頂葉における持続的発火に依存しないワーキングメモリの神経機構

ワーキングメモリとは現在の作業に必要な情報を一時的に記憶し、その記憶に基づいて一連の作業を効率的に実行する機能である。長年の定説によると、ワーキングメモリにおける情報の短期的保持は、前頭連合野外側部(LPFC)ニューロンの持続的発火が担う。あたかも、我々が電話番号を覚えておくのに頭の中で復唱し続けるのと同じことをニューロンが行っている、という考えである。この説によると、WMは長期記憶とは異なり、神経回路内のシナプス伝達効率の変化(化学的変化)やスパイン伸縮・シナプス新生という回路自体の繋ぎ変え(形態的変化)を伴わず、神経発火(電気的活動)だけに依存する。しかし最近、我々はこれとは大きく異なるLPFCニューロンの挙動を発見した。すなわち、サルLPFCニューロンが持続的発火によってタスク(第一課題)情報を保持している最中に、別のタスク(第二課題)を同時に課して情報処理の負荷を上げると、(1)第二課題が挿入された時間帯でのみ、第一課題に対する持続的発火が消失すること(2)一旦完全に消失した持続的活動は、第二課題終了のタイミングで、第一課題の手がかり情報が再呈示されないにも関わらず自発的に再活性し、第一課題における正解を再表象するようになった(Memory reactivation)。これらの結果は、LPFCには、定説の持続的発火のほかに、未知の情報保持機構が存在することを示唆する。即ちLPFCのニューロン集団は、①持続発火による保持と、②持続発火に依存しない保持、という2つの機構を状況に応じて使い分けていると考えられる。本研究は、この新たな保持メカニズムの全容解明のための端緒となる、と期待される。

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