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FBSコロキウム 343回生殖生物学研究室

講演

タンパク質をコードするゲノムの情報を非コード化する経路が精子形成を支える

井木 太一郎[生殖生物学研究室・准教授]

AlphaFold2を用いて新規なタンパク質間結合ペアを探索する

河口 真一[生殖生物学研究室・助教]

日時 2023年11月21日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 英語
世話人

河口 真一(助教)
E-mail:shinkawa[at]fbs.osaka-u.ac.jp
TEL:06-6879-7974

タンパク質をコードするゲノムの情報を非コード化する経路が精子形成を支える

ゲノムには、タンパク質をコードする配列「protein-coding sequence(CDS)」を含む領域と、それ以外の非コードの領域とが存在する。後者からは機能性の様々な非コードRNA群が産み出される一方、タンパク質の合成に専念するCDSは非コードRNAの産生源にはなりにくい。しかしながら、ショウジョウバエの精巣では常識が覆され、少なくとも数百もの、それでいて選択された一部のCDSから、PIWI-interacting RNA(piRNA)と呼ばれる短い非コードRNAが積極的に産生されることが分かった。いわゆるCDS-piRNAがどのように合成されるのか、精巣でどのような役割を担うのかなど論じる。現象の普遍性についても考察してみたい。

AlphaFold2を用いて新規なタンパク質間結合ペアを探索する

AlphaFold2プログラムの登場によって、タンパク質のアミノ酸配列から三次元立体構造を予測することが、かなりの精度で可能になった。さらに、AlphaFold2は、タンパク質間の複合体予測にも応用できることが示唆されている。タンパク質検出技術の向上に伴い、タンパク質間の相互作用が大規模に解析され、多くの結合タンパク質候補を含む「ビッグデータ」が蓄積されている。しかし、個々の相互作用を実験的に検証するには大変な労力が必要であり、研究を進める上でのボトルネックとなっている。そこで、AlphaFold2プログラムを用いてタンパク質の複合体を予測する、in silicoスクリーニングが期待される。私は、AlphaFold2による複合体予測を、生殖細胞内の非膜型オルガネラである「ヌアージュ」に適用し、新規なタンパク質結合ペアの探索を試みた。ヌアージュは、小分子RNAの1種であるpiRNAを産生する場である。piRNAは、トランスポゾンの発現を抑制し、ゲノムの安定化に寄与する。多くのタンパク質がヌアージュに局在し、piRNAの産生に関与することが報告されているが、それらがどのように協働するのか不明な点も多い。ヌアージュの分子機構を明らかにする目的で、20種類のpiRNA関連タンパク質間の結合を、AlphaFold2プログラムを用いて予測した。結合が報告されているタンパク質ペアに加えて、これまでに直接的な相互作用が知られていないタンパク質ペアについても、高い予測スコアを示すものが見られた。候補タンパク質ペアを培養細胞で発現させ、新規な結合ペアを見出すことができた。計算機科学によるスクリーニングを利用することによって、新規な結合候補を迅速に見出すことができると期待される。

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