FBSコロキウム 334回医化学研究室
講演 |
心臓特異的ミオシン調節キナーゼ(cMLCK)のサルコメア構造と心筋収縮性における影響 櫃本 竜郎[社会医療法人石川記念会 HITO病院 循環器内科 医長] |
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日時 | 2023年9月5日(火)12:15〜13:00 |
場所 | Zoomでのオンラインセミナーとなります:参加に必要なミーティングリンク、ID、パスワードは事前に、関係者へメールにてご連絡致します。 |
言語 | 日本語 |
世話人 |
加藤 久和(助教) |
心臓特異的ミオシン調節キナーゼ(cMLCK)のサルコメア構造と心筋収縮性における影響
拡張型心筋症の家系で、心臓特異的ミオシン調節キナーゼ(cMLCK)をコードするMYLK3遺伝子のフレームシフト変異(P639Vfs*15)を同定した。病的意義の検討のためノックインマウスを樹立したところ、cMLCKのハプロ不全による心筋収縮不全を自然発症した。弛緩時ミオシン頭部は、ATP加水分解とアクチン線維との結合が可能であるdisordered relaxation(DRX)状態と、ミオシンフィラメント側に折り畳まれてATPase活性が阻害されてアクチン線維との結合が抑制されたsuper relaxation(SRX)状態の2つの構造をとる。Mant-ATPアッセイ法を用いて、本変異マウスの心筋でDRX/SRX比の減少を確認し、AAVによるcMLCK補充によりDRX/SRX比が正常化して、収縮障害が改善することを確認した。本変異を有する患者から樹立したiPS心筋細胞でも、DRX/SRX比の減少と収縮障害が再現され、さらにゲノム編集によるMYLK3変異の正常化により、表現型は改善した。以上より、cMLCK活性低下がDRX/SRX比の低下を介して心筋収縮不全の分子機序となる。cMLCK活性化によるDRX/SRX比の調整は、HFrEFの新しい治療戦略になる可能性が示唆された。