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FBSコロキウム 330回生体機能分子計測研究室

講演

1.大腸菌べん毛モーターの回転ゆらぎ

内田 裕美子[生体機能分子計測研究室(石島研)・特任助教]

2.走化性受容体脱メチル化酵素CheBの局在変化を通じた大腸菌忌避応答過程の考察

福岡 創[生体機能分子計測研究室(石島研)・准教授]

日時 2023年6月27日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
言語 日本語
世話人

福岡 創(准教授)
TEL:06-6879-4429
E-mail:f-hajime[at]fbs.osaka-u.ac.jp

1.大腸菌べん毛モーターの回転ゆらぎ

大腸菌のべん毛は、反時計回転してスムーズに泳ぎ、時計回転してタンブリング(方向転換)するという、移動のためのナノマシンである。べん毛は、基部体(モーター)、フック(ユニバーサルジョイント)、フィラメント(スクリュー)の3つの部分から構成されている。私たちの研究室では、フィラメントにマイクロビーズを取り付けて、べん毛の回転を測定している。この測定で、べん毛が反時計回りに回転すると回転軌跡がゆらぐことがわかった。このゆらぎの原因を探るために様々な変異体を作製し、時間分解能の高い高速カメラ(12,500 – 21,600 fps)を使って回転ゆらぎを観察した。その結果、以下の三点が明らかになった。
1)回転ゆらぎは、回転の軌道がランダムかつ一過的に収縮する現象である
2)回転方向の変化の有無やべん毛フィラメントの構造に関わらず、回転ゆらぎは反時計回転時にのみ観測される
3)ストレートフック変異体の時計回転、反時計回転では、回転ゆらぎは観察されない
これらのことから、フックの構造的柔軟性により反時計回転時に回転軌道が一過性に減少することが示唆された。しかしその理由や生物学的な意義については今後のさらなる計測や議論が必要である。

2.走化性受容体脱メチル化酵素CheBの局在変化を通じた大腸菌忌避応答過程の考察

生物にとって自身に危険な物質や環境からの逃避はとても重要である.大腸菌は走化性システムを通じて外部刺激に対し誘因応答や忌避応答し,さらにCheR,CheBによる受容体のメチル化レベルの変更によるフィードバックループを通じてそれらの刺激に適応する。これらの酵素の機能や局在はよく研究されている一方で,これらの酵素の細胞内動態と実際の細胞の挙動との定量的な関連は不明である.我々はCheB-GFPの局在とべん毛運動による細胞応答を単一細胞で同時に測定し,忌避物質に対する応答性を評価した.セリン受容体Tsrを単一の受容体として発現する細胞では,忌避物質としてイソロイシンを添加した直後にCheBの極局在が増加し,かつモーターはCW回転に切り替わった.また数十秒後CheB局在は減少すると共に、モーターも徐々に回転方向転換を再開した.つまりCheBは忌避刺激による受容体活性化で極局在し、適応による受容体活性の低下で解離すると考えられる。本コロキウムでは,このCheBを介した受容体活性の蛍光イメージングを用いた計測結果,ならびにそこから推測される大腸菌忌避応答過程を議論する。

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