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FBSコロキウム 288回幹細胞・免疫発生研究室

講演

マウス精子幹細胞は未分化状態と分化状態の間を確率的に転移しながら精子を作り続ける

中川 俊徳[基礎生物学研究所 生殖細胞研究部門・助教]

日時 2021年12月16日(木)12:15〜13:00
場所 Zoomでのオンラインセミナーとなります:参加に必要なミーティングリンク、ID、パスワードは事前に、関係者へメールにてご連絡致します。
言語 日本語
世話人

尾松 芳樹 准教授
E-mail:omatsu[at]fbs.osaka-u.ac.jp
TEL:内7968

マウス精子幹細胞は未分化状態と分化状態の間を確率的に転移しながら精子を作り続ける

マウス精巣において、精子幹細胞は、セルトリ細胞や筋様細胞によって維持され、未分化型精原細胞(Aundiff)と呼ばれる細胞集団に含まれると考えられている。中川らは、Aundiffの一部でGFRα1遺伝子が発現すること、その集団に精子幹細胞が含まれることを示した(Nakagawa et al., Science 2010)。しかし、GFRα1+ Aundiffは形態及び遺伝子発現においてヘテロな集団である可能性があり、その全ての細胞が幹細胞として振る舞うのか否かは、明らかでなかった。
そこで私たちはGFRα1+ Aundiffで高発現する遺伝子のスクリーニングを行い、Plvap遺伝子とSox3遺伝子がGFRα1+ Aundiffの一部でのみ高発現することを見出した。これらの遺伝子は相互排他的な関係であり、Plvap+ 集団は未成熟な形態的特徴を示し、一方でSox3+ 集団はより分化した特徴を示した。そこで、これらの集団を、細胞分裂解析、細胞系譜解析、及び数理解析を用いて詳細に解析したところ次のことが明らかになった(Nakagawa et al., Cell Reports 2021)。①Plvapを高発現する細胞分画(Plvap+/GFRα1+)はSox3の発現が低く、精子幹細胞を濃縮する。②Sox3を高発現する細胞分画(Sox3+/GFRα1+)は、Plvapの発現が低く、より分化した性質を有する。③未分化な細胞ほど分裂頻度が低い。④精子形成の過程でPlvap+/GFRα1+→Sox3+/GFRα1+の一方通行ではなく、逆方向にも推移している。これらの結果より、均一と考えられていた精子幹細胞集団の中で、個々の細胞の特性が異なっており、その特性が変化する可能性が示唆された。このことが、精子幹細胞集団の中で特定の細胞にDNAに突然変異が蓄積することを抑制し、安定的に精子を産生することに役立っている可能性がある。

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