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研究セミナー グルコース~脳の研究からがんの研究へ~

講演

山田勝也(弘前大学大学院医学研究科分子輸送学講座 特任教授)

日時 2021年6月22日(火)16:00~17:30
場所 生命システム棟2階 セミナー室
※当日はZoom配信も予定しています。
世話人

山本亘彦
Tel: 06-6879-4636
E-mail: nobuhiko[at]fbs.osaka-u.ac.jp

要旨

脳の神経細胞が、エネルギー源としてD-グルコースではなく、アストロサイトが代謝し提供する乳酸を利用するというLactate Shuttle Modelが提唱された時、違和感がありました。では、神経細胞に発現するグルコーストランスポーターは何をしているのか。直接確かめる方法はないのかという疑問がわきました(BRAIN & BRAIN PET 2019 Educational Course BP01)。アダルトの脳切片を150ミクロン程度に薄く切って無菌的に灌流すると、1週間程度なら神経活動を記録できるという実験をしていた頃で、酸素やグルコース、血流といった神経細胞の代謝を維持する要素に関心を持つようになっていました。

脳組織内の酸素を測定するため、東京農工大学松岡英明教授のところで、クオーツでコーティングした電極技術を教えていただいた帰り際のことです。食中毒菌がご専門の松岡先生が、生菌を迅速に検査する目的で、小さな緑色蛍光基NBDを結合したD-グルコース誘導体2-NBDGを合成したが、何か使い道はありませんか?と私に尋ねられました。瞬時に、はい、脳でD-グルコースが神経細胞に取り込まれ、神経活動に応じた取り込みを示すか見たいとお話ししたところ、1gもの大量の2-NBDGを合成してくださいました。

小さいとはいえ、かなりのサイズの蛍光基を結合したD-グルコースが、D-グルコースそのものと同じように細胞に取り込まれる筈はないと当初思っていました。しかし、生きた哺乳動物細胞を用いて詳しく調べたところ、2-NBDGがグルコーストランスポーターGLUTを介して、放射性標識3-O-methyl-D-glucoseを用いてThorensらにより報告されたKm値と同じ値で取り込まれるという結果が得られ、大変驚きました(Yamada K他、J. Biol. Chem. 2000;Yamada K他、Nature Protocols 2007)。結局、私自身は2-NBDGを用いて神経活動依存的なD-グルコース取り込みをきれいに示すに至りませんでしたが、その後フランスのGiaumeらが2-NBDGを用いて脳の新しいグルコース輸送路を示し、また2-NBDGは現在まで340以上の論文で使用されるに至っていますが、まだD-グルコースの細胞内への輸送についてはわからないことだらけです(Rouach他、Science2008;Zhong他、Cell2010;Viale他、Nature 2014等)。

セミナーでは、神経細胞内へのD-グルコースの輸送とその役割に対するクエスチョンから研究をスタートしながら、蛍光D-グルコースの陰性対照として開発した蛍光L-グルコースが悪性の特徴を示す腫瘍細胞内に選択的に取り込まれる様子を目の当たりにした偶然と、その後の10年余のがん研究のお話をさせていただければと思います。

医療が進歩した現在でも、がんとその治療の副作用に苦しみながら、命を落とされる多くの患者さんがおられます。弘前大学医学部附属病院の臨床各科や病理専門医と共に、様々ながんの患者さんの生きた細胞や組織に蛍光基を結合したL-グルコース2-NBDLGを適用し、蛍光で光る細胞が存在するか否かを調べ、更に通常の病理診断を実施した後、患者さんの術後経過を婦人科で5年間追跡していただいた結果が最近得られました。これらの最新のお話も交えながら、グルコース輸送の不思議について議論できればと思います。

申し込み(Zoom)

当日はZoom配信も予定しています。配信希望の方は、前日までに以下の入力フォームにご記入下さい、zoomリンクをお知らせします。

https://docs.google.com/forms/d/19U5T4w7T_wXUmoPUedE1O9EzcA9hOS4syt5A2HMN7PQ/edit

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