SEARCH

PAGETOP

FBSコロキウム 269回微生物病研究所 遺伝子生物学

講演

多倍体肝細胞は倍数性減少を介して肝発癌を惹起する

松本 知訓[微生物病研究所 遺伝子生物学・助教]

日時 2021年6月3日(木)12:15〜13:00
場所 Zoomでのオンラインセミナーとなります:参加に必要なミーティングリンク、ID、パスワードは事前に、関係者へメールにてご連絡致します。
言語 日本語
世話人

松本 知訓
Tel:06-6879-4261
E-mail:tomomatsumoto[at]biken.osaka-u.ac.jp

多倍体肝細胞は倍数性減少を介して肝発癌を惹起する

哺乳類体細胞は典型的には2倍体のゲノムを持つが、肝細胞をはじめとして生体内には多倍体細胞が豊富に存在する。多倍体化は癌ゲノムの特徴の1つでもあり、多倍体癌細胞の増殖は染色体不安定性や癌の進展と密接に関連することが知られている。このため、正常多倍体肝細胞の増殖も染色体の分離異常を介して肝発癌を促進している可能性が推察されるが、他方で、細胞の多倍体化は余剰ゲノムのバッファー効果により発癌を抑制するという報告もあり、多倍体肝細胞の発癌への関与の理解は未だ乏しい。そこで多倍体肝細胞の発癌への関与を検討するため、多色蛍光遺伝子を内在するレポーターマウスを用いて多倍体肝細胞の増殖を可視化するマウスモデルを確立し、多倍体肝細胞の挙動を生体内で追跡する細胞系譜解析を行った。その結果、多倍体肝細胞は様々な肝発癌モデルにおいて発癌の重要な起源となっていた。また、多倍体肝細胞は肝再生の源として旺盛な再生能を示すが、興味深いことに、その増殖過程では多極分裂を行うことで倍数性を減少させうると同時に、この倍数性減少は多倍体肝細胞からの発癌過程で高頻度に生じていた。さらなる解析の結果、多極分裂による倍数性減少は染色体異常の頻度を高めるとともに、発癌を促進することも示された。重要なことに、このような発癌惹起につながる危険な倍数性減少は、多倍体化後に細胞増殖を経る過程で抑制されており、倍数性減少は多倍体肝細胞を起源とする発癌の初期の段階で生じていた。以上の検討の結果、多倍体肝細胞は肝発癌の重要な起源であり、倍数性減少は多倍体肝細胞を起源とする癌の発生を促進していることが明らかとなった。

PAGETOP