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FBSコロキウム 158回細胞機能学研究室

講演

転写と共役したヌクレオチド除去修復におけるユビキチン化・SUMO化の関与

西條將文[細胞機能学研究室]

コケイン症候群B群患者治療を志向した人工核酸による創薬基盤の創製

申育實[医薬基盤・健康・栄養研究所]

日時 2017年4月26日(水)12:15〜13:00
場所 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
世話人

西條將文(細胞機能学研究室)
Tel: 06-6877-9136
E-mail: saijom[at]fbs.osaka-u.ac.jp

転写と共役したヌクレオチド除去修復におけるユビキチン化・SUMO化の関与

転写の鋳型鎖上にあり転写伸長を阻害するDNA損傷は「転写と共役したヌクレオチド除去修復」により除去される。RNAポリメラーゼの進行の停止が引き金となると考えられているがその分子機構はまだ明らかではない。また、この修復の異常によりコケイン症候群や紫外線高感受性症候群などの遺伝性疾患が引き起こされる。今回のコロキウムでは、修復過程におけるユビキチン化・SUMO化の関与について私たちの研究室の最近の成果を含めて紹介する。

コケイン症候群B群患者治療を志向した人工核酸による創薬基盤の創製

コケイン症候群(Cockayne syndrome; CS)は常染色体劣性遺伝疾患であり、臨床症状として早期老化や日光過敏、発育遅延や種々の神経症状が挙げられる。このように重篤な疾患であるにも関わらず根治法は存在せず、対症療法に止まるのみである。原因遺伝子の1つとして患者の約8割にCSB遺伝子が報告されているが、CSB遺伝子への変異を原因する疾患として、他にも紫外線高感受性症候群(UV sensitive syndrome; UVSS)が挙げられる。UVSS患者では軽度の日光過敏が見られるのみであり、同一遺伝子への変異が重篤度の異なる2つの疾患を引き起こす原因は不明である。しかしそれぞれの患者細胞ではタンパク質の発現様式に傾向が見られる。CS患者細胞では変異CSBタンパク質の他に、スプライシングバリアントとしてCSB-PGBD3キメラタンパク質が発現するのに対しUVSS患者細胞ではPGBD3のコード領域より上流に終止コドンを生じる変異のため、CSB-PGBD3キメラタンパク質は発現せず短いCSBペプチドが発現するのみとなる。発表者は、このようなタンパク質の発現様式の違いが発症する疾患を決定する可能性があり、もしそうであれば、CS患者のタンパク質発現様式をUVSS患者の状態に変換することがCS患者治療に繋がり得ると考えた。人工核酸の1種であるスプライシングスイッチングオリゴヌクレオチド(splicing switching oligonucleotide; SSO)によりCSB mRNA上のエキソンXを読み飛ばすことが、このような変換を可能にする。本研究ではCSB mRNAのエキソンXを高効率で読み飛ばすSSO配列をスクリーニングにより複数得るとともに、それらSSO投与によりCS患者細胞で欠損している細胞機能の一部が回復することを見出した。今回は上記治療戦略について、SSO設計から細胞を用いた評価まで一連の成果を紹介する。

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