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FBSコロキウム 164回生殖生物学研究室

講演

ミツバチの社会性行動を司る脳の分子・神経基盤とその進化

久保健雄[東京大学]

日時 2017年6月21日(水)12:15〜13:00
場所 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
世話人

河口真一(生殖生物学研究室)
Tel: 06-6879-7974
E-mail: shinkawa[at]fbs.osaka-u.ac.jp

ミツバチの社会性行動を司る脳の分子・神経基盤とその進化

ミツバチは社会性昆虫であり、高度な社会を作って生活する。また、その働き蜂は「尻振りダンス」を用いて餌場の情報を仲間に伝達する。しかし、こうした社会性行動を司る脳の分子・神経基盤は明らかではない。私たちはこれまでミツバチ脳においてキノコ体(昆虫脳の高次中枢)選択的に発現する遺伝子の網羅的同定と解析を進めてきた。その結果、ミツバチのキノコ体は従来考えられていた大型と小型の他に、新たに発見した「中間型」を加えた3種類のケニヨン細胞から構成されることを見出し、それらが異なる遺伝子発現プロフィルをもつことを示した。初期応答遺伝子を用いた神経活動マッピングの結果では、採餌蜂脳では小型と「中間型」の一部のケニヨン細胞が活動していたことから、これらのケニヨン細胞が採餌飛行時の情報処理に関わる可能性が考えられる。現在は、昨年、ミツバチで初めて成功したゲノム編集法を用いて、これらの遺伝子やケニヨン細胞サブタイプの機能の実証を試みている。最後に最近、ハチ目昆虫の進化の過程でこれらのケニヨン細胞サブタイプの種類が増加したことを見出したので、これらの知見についてもご紹介したい。

実施報告

生命システム棟2Fセミナー室&ラウンジにおいて、第164回コロキウムを開催しました。今回の演者は、東京大学理学系研究科よりお越しいただいた久保健雄先生で、「ミツバチの社会性行動を司る脳の分子・神経基盤とその進化」というタイトルでお話しいただきました。まず、ミツバチの社会性について、働きバチの中でも若いハチと、年取ったハチでは異なる役割があることなどが紹介され、その高度な社会性と役割分担の分子生物学的基盤を明らかにすることが目的として示された。久保先生のグループでは、働きバチの脳構造に注目され、脳の中枢を担うキノコ体という構造が3つの異なる領域に分けられることを見出し、それぞれに特異的に発現している遺伝子を同定した。このような遺伝子プロファイリングの解析から、3つの異なる領域が、それぞれ異なる脳機能を制御していることを提唱されている。さらに、様々な種類のハチについて、同様の解析を行った結果、ハチの種類が示す社会性と、脳構造には相関する傾向が見られたことから、脳の発達と社会性の獲得とが密接に関わっていることが示唆された。また、ゲノム編集の技術を初めて、ミツバチに応用することに成功され、今後の遺伝子機能解析が飛躍的に進むと期待される。ご講演の内容が盛りだくさんであり、45分では物足りないぐらいでした。3〜4人から質問を受けた後、時間超過のため残念ながらコロキウムを閉会しました。ミツバチの科学的な魅力のみならず、飼育の上の苦労話なども盛り込んでいただき、大変興味深いコロキウムとなりました。

担当:河口真一(生命機能研究科 生殖生物学研究室(甲斐研)・助教)

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