脳の機能は生得的なプログラムをもとに、経験的な過程を経て形成されます。この過程において、脳は柔軟でありながら組織化された機能を発達させてゆきます。この柔軟な脳を構成する神経細胞は多様化しており、細胞間相互作用により神経回路を組織化し、機能を形成しています。 私たちのグループでは、脳神経系で発現する多様化細胞膜分子群(CNR/プロトカドヘリン分子群)に注目し、神経回路形成における神経細胞の多様化メカニズムを解析することにより、脳機能に関わる分子メカニズムを探求しています。このCNR/プロトカドヘリン分子群の多様性と脳機能との関連性を、遺伝子、タンパク質、細胞、個体レベルで解析することにより、脳システム形成の分子的基盤、脳機能の形成原理にアプローチすることができると考えています。 ![]() 遺伝情報と脳機能行動遺伝学やノックアウトマウスの解析により、ほ乳類の脳機能にかかわる遺伝子が明らかにされました。ある特定の遺伝子が欠損したマウスにおいて、性格(情動性)や学習能力が変化する結果は、脳機能に遺伝情報が強く関わっていることを示唆しています。この脳機能に関わる遺伝情報に注目して、こころを生み出す脳システム形成の原理を探りたいと考えています。脳システムと多様性脳は複雑なシステムであり、その要素である神経細胞が多様化して、組織化されています。この組織化は、一定な ものではなく、発達や環境からの刺激により変化する柔らかい組織化です。この柔らかい組織化を支えている基盤は、神経細胞の多様性と細胞間相互作用であると考えられます。ゲノムには、脳システムをつくる遺伝情報があり、神経細胞の多様性や細胞間相互作用に関わる遺伝情報があります。私たちはこれまでに、ヒトやマウスの脳で発現している多様化細胞膜分子群(CNR/プロトカドヘリンファミリー)を発見し、この多様化細胞膜分子群が、ゲノムにおいて遺伝子クラスターを形成していることを明らかにしてきました。このCNR/プロトカドヘリンファミリーは、中枢神経系にある多様化細胞膜分子群であり、神経細胞の多様性と細胞間相互作用に関わることが明らかになってきています。また、脳システムの進化は、機能の多様化だけではなく、高次化や特殊化をもたらしてきまし た。脳システムの基盤となる遺伝情報についての進化の原理を明らかにすることにより、脳システムへの理解がさらに進むと考えています。脳システムとヒト脳システムを司る遺伝情報と遺伝情報制御システムを明らかにすることにより、ヒトの脳システムへの理解が進むと考えられます。ヒトの脳システムは言語を司り、個々の脳システムにこころを生み出します。ヒトの脳システムにおける遺伝情報と遺伝情報制御システムを、発達、病態、高次機能との関連性より解析することにより、ヒト脳システムの特殊性への理解と、個々のヒトのもつこころの独自性への理解が進むと考えています。 |
CNR/プロトカドヘリンファミリーは多様化分子群である
CNR/プロトカドヘリンファミリーは神経回路網形成過程で発現している
CNR/プロトカドヘリン遺伝子は個々の神経細胞で異なった発現をしている
個々のプルキンエ細胞におけるプロトカドヘリン遺伝子クラスターの発現制御
プロトカドヘリンα欠損マウスにおける嗅神経投射の異常
プロトカドヘリン遺伝子クラスターにおけるDNAメチル化と遺伝子発現
連続運動の神経機構:マウスを用いた行動電気生理学的解析
哺乳動物の生殖系列において発生する新規突然変異の解析