Wheel Runners


行動を組み立てる


 楽器の演奏や発話、歩行など、複数の動作が連続してリズミカルに行われることによってはじめて意味をなす行動があります。そのような運動の遂行には、要素となる一つ一つの動作が正確に行われることはもちろん、それらの動作が順序よく正確なタイミングで行われることが要求されます。



マウスを用いたステップパターン学習

 私たちは、そのような運動やその学習の神経機構を解明することを目的として、マウスの歩行パターンを制御するホイール走行装置を作製しました。この装置では、マウスは一定のスピードで回転するホイール中を、特定のステップパターンで走るように訓練されます。マウスのステップ一歩一歩は単純な運動ですが、その積み重ねにより組み上げられる一連のステップはとても複雑な運動になります。未経験のパターンに遭遇したマウスは最初はうまく走れませんが、しばらくするとかなり複雑なパターンでも学習して走れるようになります。


-Mouse Wheel Running Apparatus-


 ホイール走行装置でマウスが走っています。マウスは喉が渇いており、報酬である水を飲みながら走ります。水の飲み口はホイールの右端にありますが、ホイールは一定のスピードで回転しているので、水を飲み続けるためにマウスは回転スピードにあわせて走り続けます。



 ホイールの模式図です。ホイールはモーターにより一定スピードで時計回りに回ります。赤い点はマウスの足場であるペグを表しています。



 マウスのステップパターンは足場となるペグ(赤線)の配置によって制御されます。たとえば、ペグをAの配置にするとマウスは左右の足を交互に動かして走ります。また、Bの配置にすると左右の足を同時に動かして走ります(A, B, 下の写真を参照してください)。ペグの配置を複雑にすることによりマウスに複雑なステップを踏ませることも可能です(C, D)。




Aパターンを走行するマウス(左)と Bパターンを走行するマウス(右)




 このようなマウスの行動は脳内でどのように組み立てられているのでしょうか。この答えを得るためには、この行動を行っているときに活動する神経細胞を見つけ出し、それらがどのように活動しているかを知る必要があります。

 そこで私たちは、この走行パターン学習に関与する神経回路を組織化学的に同定する作業を続けてきました。その結果、大脳皮質や大脳基底核にある特徴的な神経細胞群が走行パターン変更初期に特異的に活動することを見出しました。

 また、そのような神経細胞が走行時にどのように活動しているのかを知るために、走行しているマウスの脳から神経活動の記録を行っています。




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