アロステリックモデル再考-02

 

つぎに,n=3,の場合について考えていきましょう

n=3,の場合

 

まずはT状態とR状態を遷移するモデルを考え,基質SはR状態のみに結合すると考えましょう.

また,モデルには3つの結合サイトがあるとします.

TとR

TとRは平衡状態にあり,その割合Lは,

\( \Large L= \frac{T_0}{R_0} \)

と書けます.

 

解離定数,KR

ここで,R状態の基質Sに対する解離定数,KRは,

\( \Large K_R= \frac{3 R_0 S}{R_1} = \frac{ 2 R_1 S}{2 R_2} = \frac{ R_1 S}{3 R_2}\)

となります.それぞれの分子・分母に数字ががついている理由は,
 R0には3つの可能な結合サイトがあり,解離するのは1つのみなので,R0とRと1の平衡では3と1
 R1には2つの可能な結合サイトがあり,解離するのは2つの可能性があるので,R1とRと2の平衡では2と2
 R2には1つの可能な結合サイトのみであり,解離するのは3つの可能性があるので,R2とRと3の平衡では1と3
となるからです.

 

R1,R2,R3

R1,R2,R3は,

\( \Large R_1 = \frac{3 S}{K_R} R_0 \)

\( \Large R_2 = \frac{S}{K_R} R_1 = \frac{3 S^2}{ K_R^2} R_0 \)

\( \Large R_3 = \frac{S}{3 K_R} R_2 = \frac{S^3}{ K_R^3} R_0 \)

 

5状態の結合サイトの総数

5状態の結合サイトの総数は,各状態に3つずつ結合サイトがありますので,

\( \Large \begin{eqnarray} \Large 3( T_0 + R_0 + R_1 +R_2 + R_3 ) &=& 3(L R_0 + R_0 + \frac{3 S}{K_R} R_0 + \frac{3 S^2}{ K_R^2} + \frac{S^3}{ K_R^3} R_0) \\
&=& 3 R_0 \left[ L + 1 + \frac{3 S}{K_R} R_0 + \frac{3 S^2}{ K_R^2} + \frac{S^3}{ K_R^3} R_0 \right] \\
&=& 3 R_0 \left[ L + \left( 1 + \frac{ S}{K_R} \right)^3 \right] \\
\end{eqnarray} \)

となります.

 

基質Sが結合している数

基質Sが結合している数は,

\( \Large \begin{eqnarray} \Large R_1 +2 R_2 + 3 R_3 &=& \frac{3 S}{K_R} R_0 + 2 \frac{3 S^2}{K_R^2} R_0 + 3 \frac{ S^2}{K_R^2} R_0\\
&=& 3 R_0 \left[ \frac{ S}{K_R} + 2 \frac{S^2}{K_R^2} + \frac{ S^2}{K_R^2} \right] \\
&=& 3 R_0 \frac{ S}{K_R} \left( 1 + \frac{S}{K_R} \right)^2 \\
\end{eqnarray} \)

 

基質飽和度

基質飽和度,Yは,

\( \Large \begin{eqnarray} Y &=& \frac{R_1 +2 R_2 + 3 R_3 }{3( T_0 + R_0 + R_1 +R_2 + R_3)} \\
&=& \frac{ 3 R_0 \frac{ S}{K_R} \left( 1 + \frac{S}{K_R} \right)^2 }{3 R_0 \left[ L + \left( 1 + \frac{ S}{K_R} \right)^3 \right])} \\
&=& \frac{ \frac{ S}{K_R} \left( 1 + \frac{S}{K_R} \right)^2}{ L + \left( 1 + \frac{ S}{K_R} \right)^3 } \\
\end{eqnarray} \)

となります.

 

次のページに,n,の場合についての計算を行います.

 

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