アロステリックモデル再考-01
アロステリックモデルに関しては,以前にもここで説明しましたが,再度検討してみたいと思います.
さらには,MWCモデルにまで拡張していきたいと思います.
まずは前回と同様に,ストライヤーの生化学,を参考にして計算していこうと思います.
n=2,の場合
まずはT状態とR状態を遷移するモデルを考え,基質SはR状態のみに結合すると考えましょう.
また,モデルには2つの結合サイトがあるとします.
TとR
TとRは平衡状態にあり,その割合Lは,
\( \Large L= \frac{T_0}{R_0} \)
と書けます.
解離定数,KR
ここで,R状態の基質Sに対する解離定数,KRは,
\( \Large K_R= \frac{2 R_0 S}{R_1} = \frac{ R_1 S}{2 R_2}\)
となります.それぞれの分子・分母に2がついている理由は,R1には2状態があるためです,つまり,
\( \Large \ce{R_{10} <=>C[k_-][k_+ S ] R_0 <=>C[k_+ S ][k_-] R_{01}} \)
となるので,
\( \Large \frac{d R_0}{dt} = -2 k_+ R_0 S + k_- ( R_{10} + R_{01}) =-2 k_+ R_0 S + k_- S R_1 \)
平衡状態では,
\( \Large 2 k_+ R_0 S = k_- R_1 \)
\( \Large K_R = \frac{k_-}{k_+} = \frac{2 R_0 S}{ R_1} \)
同様に,
\( \Large \ce{R_{10} <=>C[k_+ S][k_- ] R_2 <=>C[k_- ][k_+ S] R_{01}} \)
となるので,
\( \Large \frac{d R_2}{dt} = -2 k_- R_2S + k_+ S( R_{10} + R_{01}) =-2 k_- R_2 S + k_+ R_1 \)
平衡状態では,
\( \Large 2 k_- R_2 = k_+ S R_1 \)
\( \Large K_R = \frac{k_-}{k_+} = \frac{ R_1 S}{2 R_2} \)
となります.
R1,R2
R1,R2は,
\( \Large R_1 = \frac{2 S}{K_R} R_0 \)
\( \Large R_2 = \frac{S}{2 K_R} R_1 = \frac{S^2}{K_R^2} R_0 \)
4状態の結合サイトの総数
4状態の結合サイトの総数は,各状態に2つずつ結合サイトがありますので,
\( \Large \begin{eqnarray} \Large 2( T_0 + R_0 + R_1 +R_2) &=& 2(L R_0 + R_0 + \frac{2 S}{K_R} R_0 + \frac{S^2}{K_R^2} R_0) \\
&=&
2 R_0 \left[ L + 1 + \frac{2 S}{K_R} + \frac{S^2}{K_R^2} \right] \\
&=&
2 R_0 \left[ L + \left( 1 + \frac{ S}{K_R} \right)^2 \right] \\
\end{eqnarray} \)
となります.
基質Sが結合している数
基質Sが結合している数は,
\( \Large \begin{eqnarray} \Large R_1 +2 R_2 &=& \frac{2 S}{K_R} R_0 + 2 \frac{S^2}{K_R^2} R_0 \\
&=&
2 R_0 \left[ \frac{ S}{K_R} + \frac{S^2}{K_R^2} \right] \\
&=&
2 R_0 \frac{ S}{K_R} \left[ 1 + \frac{S}{K_R} \right] \\
\end{eqnarray} \)
基質飽和度
基質飽和度,Yは,
\( \Large \begin{eqnarray} Y &=& \frac{R_1 +2 R_2}{2( T_0 + R_0 + R_1 +R_2)} \\
&=&
\frac{ 2 R_0 \frac{ S}{K_R} \left( 1 + \frac{S}{K_R} \right)}{2 R_0 \left[ L + \left( 1 + \frac{ S}{K_R} \right)^2 \right])} \\
&=&
\frac{ \frac{ S}{K_R} \left( 1 + \frac{S}{K_R} \right)}{ L + \left( 1 + \frac{ S}{K_R} \right)^2 } \\
\end{eqnarray} \)
となります.
ここで,気になる点は,
解離定数,K,は単純な二状態でなくても上記のように書けるの?
という疑問がわきました.そこで,計算してみました(ここです)
次のページに,n=3,の場合についての計算を行います.