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Cellular and Molecular Neurobiology

研究テーマ:大脳皮質における神経回路の形成機構

大阪大学大学院・生命機能研究科・脳神経工学講座 山本亘彦

  脳の基本的な神経回路網は哺乳類では胎児期に形成され、この間に神経系ではニューロンの産生、軸索の成長、標的細胞との結合に至る非常にダイナミックな現象が時事刻々と進行している。ここで最も興味深い現象は莫大な数のニューロンがそれぞれ正しい標的細胞とシナプス結合を作ることである。このように正確な神経回路が形成されるにあたり、成長途上の軸索は様々な手がかり因子を識別しながら、適切な道筋を通り標的部位に到達し、最終的な相手を認識すると考えられている。標的細胞に達すると軸索末端はシナプスに分化し、神経伝達が生ずる。これら一連の過程の中で、軸索を標的部位へと導く誘引性分子や反発性分子の存在が明らかになってきてはいるが、誘引・反発だけで説明できるのか、あるいは幾種類ぐらいの分子が必要なのか、特定の分子と軸索の挙動が一対一に対応しているのかなど、まだまだ不明な点は多い。さらに、以上の発生プログラムに従って構築された神経回路網は環境からの影響を受けて先鋭化することが示されているが、その細胞・分子レベルでの機構についても謎は多い。この問題を研究するために、大脳皮質の神経回路は優れた系の一つと言えよう。

大脳皮質における神経回路 (左)層特異的な神経結合. (右) 柱状構造由来の神経結合

 大脳皮質は100億個以上ものニューロンから構成されているが、その細胞構築や神経結合のパターンには一定の規則性のあることが知られている。大脳の表薄切片を観察して真っ先に気付くのが層状構造であり、哺乳類を通して共通な特徴である。それぞれの層に属する細胞は形態学的、発生学的に共通の性質を有し、他の脳の部位との神経結合においても層ごとの特性が存在する。一方、脳表面に垂直な柱状の微小領域には皮質ニューロンの樹状突起や軸索が並行して配列しており、機能的なユニット(柱状構造)を構成している。層に特異的な神経結合は概ね発生のプログラムに依存するのに対して、柱状構造に基づく神経結合は生後に発達し、外界からの刺激に由来する神経活動によって修飾される。私たちは、これら大脳皮質内の層構造・柱状構造特異的な神経回路を対象として神経回路形成の問題に取り組んでいる。


研究テーマ1. 大脳皮質における層特異的な神経回路形成の制御機構に関する研究

研究テーマ2. 神経活動依存的な皮質神経回路の形成機構に関する研究

研究テーマ3. 大脳皮質の回路形成におけるゲノム構造制御機構に関する研究


脳神経についてあまりご存じでない方は、こちらの研究紹介ポスターをご参照下さい。
 

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