我々の実験により得られるデータには必ずノイズが含まれています.
従って,
S/N
つまり,シグナルと,ノイズとの比がデータのクォリティを示す指標となるのです.
ですので,実験系を組む場合,いかにこのノイズを減らすかが肝となるのです.
ノイズの原因としては,様々なものが考えられます.
長いスパンのもの
短いスパンのもの
と分けて考えていきましょう.
長いスパンのものとしては,
温度ドリフト
などが一番身近なものです.
熱的に平衡にないシステムの場合,温度変化によるデータの変化が生じる場合が多いです.
これ以外にも,
水分の蒸発による溶液の濃度の上昇
経年変化(蛍光の退色など)による変化
など,様々なものがあります.
短いスパンのものとしては,
測定機器の電気ノイズ,交流電流によるノイズ
光(フォトン)の数のゆらぎ
測定装置の振動
などなどこれまた様々です.
それ以外にも,プローブ(ガラスニードル,レーザートラップなど)の熱ゆらぎなども,この場合にはノイズと考えていいでしょう.
さて,シグナルとノイズの関係は周波数によりある程度は分離できます.
長いスパン = 低周波
シグナル = 中周波
短いスパン = 高周波
と考えていいので(あくまで相対的ですが),低周波カットフィルタ,高周波カットフィルタを使うことにより,シグナルだけを抽出することが可能です.
長いスパンのノイズ(ドリフトなど)は,
トレンド除去
などの操作により,ある程度は除去できます.
しかし,問題なのは,
高周波成分を含んだシグナル
の場合です.
この場合には,短いスパンのノイズを高周波カットフィルタなどで除去しようとすると,シグナルまで影響を受けてしまいます.
高周波を含んだシグナル?
これはどのようなものがあるのでしょう.
代表的な例として,
ステップ状の変位
があるのです.
次ページに具体的な例をしましましょう.