FRET論文,Correlation of CheY-P concentration and motor behavior during attractant adaptation in single E. coli cells,がSciencesAdvancesに掲載されましたが,途中の計算がなかなかややこしいです.
そこで,日本語で順を追って説明していきたいと思います.
・Cross-Talk (CT)
クロストークなかなかややこしい概念ですが,式(2)には,
\(\Large \text{FRET ratio (%)} = \left( \frac{FI_{\mathrm{lac@YFP}}}{FI_{\mathrm{loc@CFP}} } - CT \right) \times 100 \hspace{40pt} (2)\)
と出てきます.論文では,CT = 0.34,としています.
この,0.34,はどこから出てきたのでしょうか?
Supplementary Materials,に詳しく書いてありますが,順を追って説明していきます.
基本は,筆頭著者の山越君の修士論文を参考にしています.
・ダイクロイックミラーセット
FRET蛍光顕微鏡には,
アクセプタ側のフィルター (Em1)
ドナー側のフィルター (Em2)
ダイクロイックミラー (DM3)
の3点セットがあり,使用する蛍光色素に応じて使用します.
ECFPの蛍光特性が,以下のような波長帯であれば,何も問題ありません.

しかし,実際は,
となり,CFPの蛍光が,CFP channelにも,YFP channelにも入り込むことがわかります (Fig.S1-B).
つまり,”FRETが起きなくても(YFPが蛍光を発しなくても),YFP channelで蛍光が観測できちゃう”,ことになるのです.
この図からもわかるように,CFPの蛍光特性は幅広い波長帯に渡っており,YFPチャンネルにも存在することになります.
したがって,YFPチャンネルから,YFPの蛍光を計測しているが,その何割かがCFP由来であることになります.
その割合を検証するうえで,CFPの蛍光のYFPチャンネルのCFPチャンネルに対する割合を考えればよいことになります.
その分(これがクロストーク),をYFPチャンネルから差し引けば,YFP由来の蛍光をYFPチャンネルで定量することができます.
式で表すと,
\(\Large \frac{\displaystyle \int_{526}^{559} Em_{CFP} (\lambda) \ d \lambda }{\displaystyle \int_{463}^{501 } Em_{CFP} (\lambda) \ d \lambda} \)
この計算を行うためには,
ECFPの蛍光特性 (FPbase)
CFPチャンネルとYFPチャンネルを分離するダイクロイックミラー(DM3, FF509-FDi01, Semrock)
CFPチャンネルのフィルター(Em1, FF01-483/32, Semrock, 463-501)
YFPチャンネルのフィルター(Em2, FF01-542/27, Semrock, 526-559)
が必要となります.
この関係を図示したものが,
となり,
オレンジ : CFPチャンネルのフィルター(Em1)
緑 : YFPチャンネルのフィルター(Em2)
水色 : CFPチャンネルとYFPチャンネルを分離するダイクロイックミラー(DM3)
紺 : ECFPの蛍光特性
であり,赤い線が,CFP,YFPチャンネルそれぞれに透過するCFPの蛍光となります (Fig. S1-B).
計算式は,
CFPチャンネルに透過するCFPの蛍光:CFPの蛍光 × CFPチャンネルフィルター特性 ×(1-ダイクロイックミラー特性)
YFPチャンネルに透過するCFPの蛍光:CFPの蛍光 × YFPチャンネルフィルター特性 × ダイクロイックミラー特性
その割合は, 0.337965....,となり,CT = 0.34,を導き出すことができます.
では,この値が妥当であるか,検証してきましょう.