Barkai-Leiblerモデルを考える-01

Uri Alonによる説明

Barkai-Leiblerモデル,大腸菌の走化性応答のモデルとしては基本的なモデルとなります.

その前に,Albert Goldbeter, Lee Segelらのモデルもありますが,それはまた次の機会に...

このモデルは,Alonの著書に詳しく書いてありますので,これを元に理解していきたいと思います.

正直........私が完全に理解しているとは思えないので,間違いがありましたらご指摘ください.

 

Uri Alonの著書,

An Introduction to Systems Biology: Design Principles of Biological Circuits

初版の日本語版第2版がありますが,このモデルに関しては若干説明の仕方が異なるようです.

 

初版

初版には以下のモデル図が掲載されています.

 

 

しかし,文中の数式との対応がいまいち不鮮明,ということで自分なりに書き直してみました

 

ここで,

X:レセプター(不活性,非メチル化)
Xm:レセプター(不活性,メチル化)
Xm*:レセプター(活性,メチル化)

となります.

ポイントは,

 CheBの反応はミカエリスメンテンに基づくが,CheRの反応は飽和で働く(つまりXの濃度によらない,0次反応)

ことです.言い換えると,

 CheRの反応は遅い(少ない)ため,この反応が起こってもXの濃 度は変化せず一定

ということと思います.

また,

 CheBによる脱メチル化はメチル化状態のうち,Xm*,のみ依存する

という点.そして,

 メチル化レセプター全濃度(Xm+Xm*)を考える
 しかし,脱メチル化は,Xm*,でしかおこらない

という点です.ここが私には何かすっきりしませんが...とりあえず本の説明に則って....

つまり,

 

こんな感じにまとめちゃうわけです.つまりメチル化レセプター全濃度は非メチル化レセプター(X)との反応と考えると,全メチル化レセプターの時間変化は,

 メチル化速度 ー 脱メチル化速度

となるので,

\(\Large \displaystyle \frac{d (X_m+X_m^*)}{dt} = k_R \cdot R-\frac{k_B \cdot B \cdot X_m^*}{K+X_m^*} \)

となるのです.本文では,

\(\Large \displaystyle \frac{d (X_m+X_m^*)}{dt} = V_R \cdot R-\frac{V_B \cdot B \cdot X_m^*}{K+X_m^*} \)

とありますが,ここでは,速度定数,k,で記述します.

つまり,

 メチル化はCheRの活性による(非メチル化レセプターの濃度に依存しない)
 脱メチル化は,ミカエリスメンテンに従う

というもののようです.このように書き換えるとわかりやすいかもしれません

脱メチル化反応だけピックアップすれば(点線で囲った反応),ミカエリスメンテンですね.

定常状態においては,

\(\Large \displaystyle k_R \cdot R = \frac{k_B \cdot B \cdot X_m^*}{K+X_m^*} \)

となるので,メチル化活性化レセプター(Xm*)は,

\(\Large \displaystyle X_m^* = \frac{K \cdot k_R \cdot R }{k_B \cdot B - k_R \cdot R} \)

刺激後,メチル化活性化レセプター(Xm*)の数は減少しますが(kIが0でないため),CheRによるメチル加速度は一定のため,メチル化レセプター全濃度は徐々に増加します.

メチル化レセプター全濃度が増加するので,メチル化活性化レセプター(Xm*)の数も増加し,適応後のメチル化活性化レセプター(Xm*)の数は,

\(\Large \displaystyle X_m^* = \frac{K \cdot k_R \cdot R }{k_B \cdot B - k_R \cdot R} \)

となり,完全に復活する,という訳のようです......ただ私にはこの最後の,完全に復活する,という意味がいまいちわかりませんでした.....

ただ,メチル化活性化レセプター(Xm*)の数は,kIに依存しない,と考えると,確かにそうですね..

これは,次ページで議論したいと思います.

 

第2版(英語)

2版となると,大分話が簡略化されて,メチル化の時間変化は,

\(\Large \displaystyle \frac{dm}{dt} = V_R \cdot R- V_B \cdot B \cdot X^* \hspace{40 pt} (9.4.1) \)

となり,初版での設定,

 CheRの反応は遅い(少ない)ため,この反応が起こってもXの濃 度は変化せず一定

は踏襲されていますが,ミカエリスメンテンに関する記述はなくっているようです.

定常状態においては,

\(\Large \displaystyle X_{st}^* = \frac{V_R \cdot R}{ V_B \cdot B } \hspace{40 pt} (9.4.2) \)

となり,誘引物質に依存しない,とあります..しかし...大前提として誘引物質の関与がないような気が....

 

次ページに,私なりの考えを示します.

 

t r