1回転中に26ステップとは,何を意味するのでしょう?
どこに由来するかをきちんと考えなくてはなりません.
まず考えなくてはいけないのが,
Artifact
と言う問題です.
このことはサイエンスを行う際に,必ず考えなくてはなりません.
何か,モーターとは別の要因の可能性を考えなくてはなりません.
一番おそれるのが,菌体外部のなにかの障害物.
フィラメントに大きなビーズを固定していますので,菌体表面に何か障害物があるとそれにビーズがぶつかって,あたかもステップ状変位となります.
しかし,それは,以下の二つの点から除外できます.
まずは,周期性.
もし菌体表面に障害物があってビーズがステップ状変位をすると,ステップを行う場所はランダムになるはずです.
表面に存在する障害物が周期的に並んでいない限り.
しかし,前ページにあるように,ビーズの位置のヒストグラムを取って,フーリエ変換するときれいにピークが出ます.
これは,規則的にビーズがステップ状変位していることを示します.
それに,障害物と思われる,Pili,というタンパクは遺伝子操作で欠損された菌体を使用しています.
従って,そのような,artifact,の可能性は低いと判断できます.
つまり,このステップ状変位は,
モーターの構造に由来する
ものである可能性が高いのです.
では,もう一度モーターの構造を見てみましょう.
先に述べたように,モーターは,
固定子
回転子
から構成されます.
固定子の数は8~13と言われています.
ですので,26に関係しそう,と言えばしそうですが,まだ数が確定していないので,今回の結果と議論することは難しいですね.
では,回転子はどうか,見てみましょう.
回転子の中でトルク発生に関与している,と思われるところは,
MSリング
C リング
の部分です,確固たる証拠はありませんが.
それぞれの部分にはいくつかのタンパク質が軸対称に並んでいる,と考えられています.
現在までに,電顕などで提案されているタンパク質の数は,
MSリング : FliG 26
C リング : FliM,FliN 34
となり,どうもFliGと言うタンパクが今回実権から得られた26ステップに関与しているようです,確固たる証拠はありませんが.
上の図の下にステップのヒストグラムを描いてあります.
ちょうどこの周期が,FliG(図では緑色)の周期と一致していることがわかります.