“おもろい”の求道者へ

牧野 文信

2011年 博士(工学)
プロトニックナノマシン研究室(現:日本電子YOKOGUSHI協働研究所(難波啓一 特任教授))出身

私は2006年から生命機能研究科・難波研究室に入り、2011年に卒業しました。そのあと、一年間学振ポスドク、二年間イギリス・ブリストル大学にポスドクとして留学し、2015年にまた生命機能研究科に戻ってまいりました。

私が入学した当時(2006年)、本研究科はすでに"異分野融合"と"おもろい"をテーマにしており、私自身も専攻を情報工学から生物物理に変更した手前、一人異分野融合と息巻いていました。しかし、この学科に入りそれが特別ではないということに気が付きました。そもそも異分野融合とは、技術の発展とともに進んできた生物の分野では常々当たり前に行われてきたからです。
例えば、日本生物物理の始祖、大沢文夫先生は物理学の視点から生物を見つめることで、自分の独自性(つまり、おもろい!)を発揮し生物物理の分野を開拓しました。
また、先生はラボの運営について「第一に常に自分自身がオリジナルな考え方によっておもしろい研究を自分で楽しく続ける。第二に、若い学生や研究者たちのオリジナルな考え方や提案を大切にする」「仕事の早さで能力の評価に差をつけない。おもしろさが最大のポイント。おもしろさの感度が大切」とも仰っております。(冬野いち子,良きメンター、良き科学者,Nature Digest, Vol 7, Jan. 2010)
生命機能研究科もおもろいをテーマにしているので、この精神に則って運営しているといっても過言ではありません。
話は逸れてしまいましたが、異分野融合の成功ポイントとしては、まずは、自分の専門性をしっかりと確立すること。新しい技術や知らない技術があったら、いち早く理解し身につけ、自分たちの分野でどう発揮できるか。また、自分の技術や専門性を異なる領域でいかに活かせるか。それらを常に考える癖を学生のうちから身につけることだと私は思います。このことがおもろい研究に繋がるはずです。

私自身については、専門が電子顕微鏡を用いたタンパク質の構造解析なので、その対象となるタンパク質がどうおもろいかが鍵となります。現在ポスドクとして働いている深川研では、セントロメア・キネトコアの構成分子の構造解析をしています。学生時代とは違う分野ですが、私の専門でだれも手をつけられていない分野なので思い切って飛び込みました。まだ結果は出ていませんが、自分の成果が出たとき一体どれだけの人を"おもろがらせる"ことができるだろうかとわくわくしながら研究しています。
しかしながら、時間は限られており、身につけられる技術には制限があります。その点については無理して頑張る必要はないと思ってます。出来ないことは他の出来る人やラボに頼ればよいのです。
こうなると、コミュニケーションが必要になるので、いろいろと話しを聞いたり、話しかけたりすることが大切だと思います。幸いにも、ここでは毎週いろんなラボのセミナーを聞いたり、研究交流会や合宿など、他のラボと接触する機会が多々あります。積極的に自分からそのチャンスをつかめるよう努力しましょう。
また、この研究科においては"おもろい"は最優先事項ですので、おもろければ、どんな奇想天外な研究でも、許してくれると私は思っています。自分なりの"おもろい"を見つけて研究に邁進してください。それだけではなく、他人に自分の"おもろい"を伝える努力も忘れないで下さい。

学生時代には色々なことにチャレンジしてみて下さい。きっと、周りの生命機能研究科の人達もおもろければいいんじゃなーいと生温かい目で見守ってくださるはずです。