ION CHANNEL GROUP 本文へジャンプ
薬物相互作用
簡易的にチャネル活性を測定する方法の確立

人工脂質二重層膜を用いた単一チャネル活性測定は、イオンチャネルの生理的・薬理的特性を明らかにするためによく用いられている方法である。この技術は、イオンチャネル1分子を通るイオンを捉えることができるため、感度の高いセンサーとしての応用が期待されている。しかしながら、脂質二重膜層が不安定であったり、チャネルが二重膜層に組み込まれる効率が低かったりという問題がセンサーとしての活用を妨げている。そこで、我々は安定な脂質二重層膜を形成し、かつ簡便にチャネル活性を効率よく測定する以下の2つの方法を開発した。

ハイドロゲルと溶液の境界またはハイドロゲルとハイドロゲルの接触面に脂質二重層膜を形成させ、そこにチャネルを組み込む方法

a) ハイドロゲルと溶液の境界

<方法>
  
1. 0.5 – 2 %のハイドロゲル(アガロース VIIやセファロース4Bなどをバッファーに混ぜたもの
    ) を熱して溶かし、先端径が30 - 50 μmのガラスピペットやプラス チックチューブ(半径
   100 – 200 μl)に充填し、固まるまで待つ。
  2. 膜ベシクルやチャネルペプチドを加えたバッファーをチャンバーに注ぎ入れ、その上に脂
    質溶液を重ねる。
  3. ハイドロゲルが詰まったガラスピペットもしくはプラステックチューブを脂質溶液層からバ
    ッファー層まで差し入れる(バッファー層10μm – 1 mmの深さまで)。
  4. ゲル層とバッファー層の間に脂質二重膜層が形成され、自然にチャネルが組み込まれ
    る


             

   

<この方法により観察されたチャネル電流>

以下のチャネルの活性を上記の方法で測定した結果、 数秒以内にチャネル電流は測定され
 効率的に膜に組み 込むことができた

        

       
                                  

  

b) ハイドロゲルとハイドロゲルの接触面

1. ポリスチレンやガラスのチューブに溶解した0.5 – 2 %のハイドロゲルを充填する。

2. ゲルが固まる前に片側から圧力を加え、チューブの先端に小さなゲルビーズを形成さ  せる。

3. シャーレに流し入れ固めたハイドロゲル層の上にチャネルが含まれる膜ベシクルをの  せる。

4. ハイドロゲルビーズを上から下ろしてハイドロゲル層と接触させる。数秒以内に脂質   二重層膜が形成され、チャネルが組み込まれる。

       

 

<この方法により観察されたチャネル電流>
 以下のチャネルの活性を上記の方法で測定した結果、 数秒以内にチャネル電流は測定さ れた。

  
            

    

② チャネルを固定したコバルトアフィニティビーズの上に脂質二重層膜を形成させ、チャネルを組み込む方法。
<方法>
 1. ヒスチジンタグ付きのチャネルをコバルトアフィニティビーズと混合し、結合させる。
 2. バッファーを満たしたシャーレにチャネルを結合させたビーズを置き、図のようにチャンバー
   の底面の穴に水平に張った脂質層をアフィニティビーズと接触するまで下ろす。
 
 3. 自然に脂質二重層膜が形成され、続いてチャネルが組み込まれる。
  
                             
             
   
<この方法により観察されたチャネル電流>
 ヒスチジンタグを付けたバクテリアのKチャネル(KcsAMthK)の活性を上記の方法で測定した結果、数分以内に脂質二重層膜が形成され、その数分後チャネルが組み込まれた。この方法により、効率的に膜に組み込むことができただけでなく、チャネルが膜へ組み込まれる方向も制御することができた。

    
             

  

   文献

  M. Hirano, Y. Takeuchi, T. Aoki, T. Yanagida, T. Ide, Current recordings of ion channel proteins immobilized on resin beads, Anal. Chem., 81(8), 3151-3154 (2009)
  T. Ide, T. Kobayashi, M. Hirano, Lipid Bilayers at the Gel Interface for Single Ion Channel Recordings, Anal. Chem.,   80(20), 7792-7795 (2008)

 M. Hirano, T. Kobayashi, T. Ide, Lipid Bilayers at Gel/Gel Interface for Ion Channel Recordings, e-J. Surf. Sci. Nanotech., 6, 130-133 (2008)

 
 
チャネル活性の阻害過程の電気的・光学的同時測定


 我々が開発した光学的・電気的同時測定装置を用いて、単純なチャネルポア(α-ヘモリシン)と阻害剤(蛍光色素で標識したDNA)の相互作用の過程を観察することに成功した。この技術を用いれば、創薬の主なターゲットであるチャネルと阻害剤との結合・解離の様子を1分子レベルで詳しく明らかにすることができるため、薬理的に有用な知見が得られるだろう。

   



文献

T. Ide, Y. Takeuchi, H. Noji, K. Tabata, "Simultaneous optical and electrical single channel recordings on aPEG glass", Langmuir, 26, 8540-3 (2010)




研究内容
HOME