さて,周波数に展開して,パワースペクトルで考えると,別のノイズと区別できる,ということをお話ししました.
もう一つやっかいなのが,
キャリブレーション
なのです.
トラップされたビーズなどの運動は,ナノ計測システムを用いて計測します.
そのときの出力は,
電圧(V)
なのです.
我々が知りたいのは,
変位(m)
なのですから,どこかでキャリブレーションをして換算しなくてはなりません.
もし,このキャリブレーションが間違っていたら......見積もった変位の大きさも弾性率も間違うことになります.
そこで,キャリブレーションなしに弾性率を見積もる方法が,
コーナー周波数
からの見積もりです.
コーナー周波数は先に定義したように,
0Hzにおけるパワー密度の半分のときの周波数
となります.
当然,この値は,ビーズのトラップ弾性率,粘性抵抗,に依存します.それは,
となります.
ここで,γ,は粘性抵抗であり,球体の場合,
となります.ここで,η,は溶液の粘度,r,は球体の半径,です.
ここでは,ビーズの粘性抵抗,コーナー周波数のみしか必要となるパラメータがありません.
つまり,キャリブレーションなしに,トラップ弾性率,K,を見積もることができるのです.
実際には,以上述べた複数の見積もり手法をいくつか使って正しい弾性率を見積もります.