グラジエントゲルの濃度変化-01

 

グラジエントゲルを作成する際に使われる装置は以下となります.

特徴は,
 二つの容器に,それぞれ違う濃度の溶液が入っている
 濃い方の容器に蛇口がある
 二つの容器の底には細いパイプでつながれている
 濃い方の容器にはスターラーがあり,つねに攪拌されて均一な濃度となる

です.

作成の手順は,
 蛇口が開いて,溶液が放出される
 まずは濃い溶液が放出される
 濃い容器の容量が減ると,それに伴い濃度の低い容器から液が補充される
 (常に二つの容器の界面が等しくなる)
 それに伴い,濃い容器の濃度が下がる

となり,徐々に放出される溶液の濃度が下がることになります.

さて,この場合,放出される濃度変化がどのようになっているのでしょうか?
計算してみましょう.

モデルとして,
 濃い溶液の濃度を,C0,体積をV0とする
 一定間隔で,a,ずつ放出される

としました.

また,簡単のため,

\(\Large C_L = 0 \)

とおいて式を構築していきましょう.

わかりやすい例を挙げると,
 100℃の温度のお風呂から,バケツ2杯分除く
 0℃の水をバケツ1杯分補填する

を繰り返すと考えると,イメージがつきやすいかもしれません.

数回繰り返した変化を表で表すと,

n V C
0 V0 C0
1 V0-0.5a C0(V0-a)/(V0-0.5a)
2 V1-0.5a C1(V1-a)/(V1-0.5a)
3 V2-0.5a C2(V2-a)/(V2-0.5a)
4 V3-0.5a C3(V3-a)/(V3-0.5a)

となっていきます,つまり,

\(\Large c_1 = c_0 \frac{V_0 - a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large c_2 = c_1 \frac{V_1 - a}{V_1 - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large c_3 = c_2 \frac{V_2 - a}{V_2 - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large c_4 = c_3 \frac{V_3 - a}{V_3 - \frac{1}{2} a} \)

となります.

Vは0.5aずつ減少していくので,n回目には,

\(\Large V_n = V_0 - \frac{n}{2} a \)

と簡単に記述できます.従って,

\(\Large c_1 = c_0 \frac{V_0 - a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large c_2 = c_1 \frac{(V_0 - \frac{1}{2} a) - a}{(V_0 - \frac{1}{2} a) - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large c_3 = c_2 \frac{(V_0 - \frac{2}{2} a) - a}{(V_0 - \frac{2}{2} a) - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large c_4 = c_3 \frac{(V_0 - \frac{3}{2} a) - a}{(V_0 - \frac{3}{2} a) - \frac{1}{2} a} \)

となります.c2にはc1, c3には,c1,c2を代入すると,

\(\Large c_2 = c_1 \frac{(V_0 - \frac{1}{2} a) - a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large \hspace{16 pt} = c_0 \frac{V_0 - a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \frac{V_0 - \frac{3}{2} a}{V_0 - \frac{2}{2} a} \)

\(\Large c_3 = c_2 \frac{(V_0 - \frac{2}{2} a) - a}{(V_0 - \frac{2}{2} a) - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large \hspace{16 pt} = c_0 \frac{V_0 - a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \frac{V_0 - \frac{3}{2} a}{V_0 - \frac{2}{2} a} \frac{V_0 - \frac{4}{2} a}{V_0 - \frac{3}{2} a} \)

\(\Large c_4 = c_3 \frac{(V_0 - \frac{3}{2} a) - a}{(V_0 - \frac{3}{2} a) - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large \hspace{16 pt} = c_0 \frac{V_0 - a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \frac{V_0 - \frac{3}{2} a}{V_0 - \frac{2}{2} a} \frac{V_0 - \frac{4}{2} a}{V_0 - \frac{3}{2} a} \frac{V_0 - \frac{5}{2} a}{V_0 - \frac{4}{2} a} \)

と一定の法則に基づいていることがわかります.

n回目は,

\(\Large c_n = \displaystyle \prod_{ i =1 }^n \frac{V_0 - \frac{n+1}{2} a}{V_0 - \frac{n}{2} a} \)

この記号は,総乗,もしくは総積と言う物らしく,各項の積を取る物です.

\(\Large \hspace{16 pt} = c_0 \frac{V_0 - a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \frac{V_0 - \frac{3}{2} a}{V_0 - \frac{2}{2} a} \frac{V_0 - \frac{4}{2} a}{V_0 - \frac{3}{2} a} \frac{V_0 - \frac{5}{2} a}{V_0 - \frac{4}{2} a} \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \frac{V_0 - \frac{n+1}{2} a}{V_0 - \frac{n}{2} a} \)

よく見ると,分母ととなりの分子とで消せる,ことがわかりますね.従って,

\(\Large \hspace{16 pt} = c_0 \frac{V_0 - \frac{n+1}{2} a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \)

と大幅に単純化することができます.

後は,

\(\Large \hspace{16 pt} = c_0 \frac{V_0 - \frac{1}{2} a - \frac{n}{2} a}{V_0 - \frac{1}{2} a} \)

\(\Large \hspace{16 pt} = c_0 \left[ 1 - \frac{\frac{1}{2} a}{V_0 - \frac{1}{2} a} n \right] \)

となって直線的に減少していきます.

さらに,最終濃度は0となります.

また,加える溶液の濃度を0でなく,CLとしますと,最終濃度はCLとなります(計算結果のみですが)

いままで,最終濃度は(CH+CL)/2だと勘違いしていて,授業でもそう教えていました....すいません..

 

気になる点....

\(\Large c_n = 0 \)

となる,nはいくらになるかというと,

\(\Large 1 = \frac{\frac{1}{2} a}{V_0 - \frac{1}{2} a} n \)

\(\Large \frac{1}{2} a n= V_0 - \frac{1}{2} a \)

\(\Large \frac{1}{2} a ( n + 1 ) = V_0 \)

\(\Large n + 1 = 2 \frac{V_0}{a} \)

となって,n+1回目に0となります.体積が0となるのはn回目なので....1回分ずれるような....

 

もう一つは,

\(\Large C_L \neq 0 \)

の場合...計算できるかと思いますが....今後の課題とします.結構大変な計算量で...
どなたか..わかる方は教えてください!

学部3回生の,濱元君,林君が解いてくれました.
次ページからその解説をします(掲載は本人の許可済み).

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