ランジュバン方程式-01


 ランジュバン方程式とは?

今まで,運動方程式を理解してきました.しかし,ミクロな物体,特に水中では周囲の水分子からの衝突を受けます.
従って,一般的な外力(水分子の衝突以外)がないときにもミクロな物体は絶えず動いてしまいます.

その動きは,ランダムで一般的な運動方程式では記述できません.
どうしたらよいでしょう?
そこで,登場したのが,
 ランジュバン方程式
なのです.

ランジュバン方程式自体はそれほど複雑な式ではありません.

\(\Large m \frac{d^2}{dt^2} + \gamma \frac{dx}{dt} = R(t) \)

となります.ここで,R(t),とは何でしょう?
簡単に言うと,
 ランダムな力
となります.
重力や電場と言ったある方向を持った力ではない,ランダムな力です.
ですので,当然平均値は0となります.

\(\Large <R(t)>=0 \)

また,R(t)には時間的な周期性もないとしますので,自己相関がデルタ関数となります.

\(\Large <R(t) \cdot R(t')> \propto \delta (t-t') \)

では,ランジュバン方程式を解いていきましょう.まずは,両辺にxを掛けます.

\(\Large m x \frac{d^2}{dt^2} + \gamma x\frac{dx}{dt} = x R(t) \)

これを解くわけですが,ここで微分を変形しましょう.

\(\Large \frac{d(x^2)}{dt} = 2 x \frac{dx}{dt} \)

\(\Large x \frac{dx}{dt} = \frac{1}{2} \frac{d(x^2)}{dt} \)

\(\Large \frac{d^2(x^2)}{dt^2} = \frac{d(2 x \frac{dx}{dt})}{dt} = 2 \frac{dx}{dt} \frac{dx}{dt} + 2x \frac{d^2x}{dt^2} = 2 \{ (\frac{dx}{dt})^2 + x \frac{d^2x}{dt^2} \} \)

\(\Large x \frac{d^2x}{dt^2} = \frac{1}{2} \frac{d^2(x^2)}{dt^2} - (\frac{dx}{dt})^2 \)

を使って変形すると,

\(\Large \frac{1}{2} m \frac{d^2(x^2)}{dt^2} - m \left( \frac{dx}{dt} \right) ^2 + \frac{1}{2} \gamma \frac{d(x^2)}{dt} = x R(t) \)

となります.

ここで集合平均を取ります.

\(\Large \frac{1}{2} m \frac{d^2(<x^2>)}{dt^2} - m <( \frac{dx}{dt})^2> + \frac{1}{2} \gamma \frac{d(<x^2>)}{dt} = <x R(t)> \)

ここで,右辺のカギ括弧内の二つは独立なので,それぞれの平均の積と置き換えることができます.
さらに,ランダムな力の平均は0なので,

\(\Large <x R(t)> = <x> <R(t)> =0 \)

さらに,

\(\Large <( \frac{dx}{dt})^2> = <v^2> \)

なので,

\(\Large \frac{1}{2} m \frac{d^2(<x^2>)}{dt^2} - k_B T+ \frac{1}{2} \gamma \frac{d(<x^2>)}{dt} = 0 \)

となります.

次にこの微分方程式を解いていきましょう.

 

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