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FBSコロキウム 333回1分子生物学研究室

講演

生体分子モーターキネシンのゆらぎによる加速現象

有賀 隆行[1分子生物学研究室[上田研]・准教授]

日時 2023年7月25日(火)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 ナノバイオロジー棟3階 セミナー室
言語 日本語
世話人

有賀 隆行(准教授)
E-mail:ariga.fbs[at]osaka-u.ac.jp
TEL:06-6879-4611

生体分子モーターキネシンのゆらぎによる加速現象

 細胞内で小胞を輸送する生体分子モーターであるキネシン(kinesin-1)は、熱ゆらぎを利用して効率的に一方向の運動を実現すると提唱されてきた。その分子機構は、近年の1分子計測技術の進歩により詳細に明らかにされたが、効率については、確率的なふるまいのため議論が難しかった。
 我々は、キネシンの速度ゆらぎと応答(微小な外力を加えた際の速度変化)を測定し、散逸を定量することによりエネルギー入出力を調べた[1]。その結果は意外にも、キネシンが非効率的に見えていた。一方、実際に彼らが働く生きた細胞内の環境は、代謝エネルギーを消費して非熱的にゆらいでいることも明らかになった[2]。これらの結果から、キネシンはin vitroの実験条件ではなく、非熱的にゆらぐ細胞内環境に最適化されているだろうと仮説を立てた。
 細胞内で見られる非熱的なゆらぎがキネシンの運動に与える影響を調べるため、そのゆらぎを模した外力の変動を人工的に創り出し、1分子のキネシンに加えながら運動を計測した[3]。その結果、外力のゆらぎによって(特に高負荷下で)キネシンが加速する現象を見出した。この加速現象は数理モデルでも再現され、このモデルの背後にある理論の普遍性から、この現象は一般の生体分子機械で起こることが示唆された。
 本コロキウムでは、これらの最近の成果を紹介するともに、ゆらぎと応答をキーとして、対象や階層を広げた今後の研究の展開についても議論したい。
[1] Ariga et al. Phys. Rev. Lett. 121, 218101 (2018), [2] Nishizawa et al. Sci. Adv. 3, e1700318 (2017), [3] Ariga et al. Phys. Rev. Lett., 127, 178101 (2021)

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