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FBSコロキウム 318回ダイナミックブレインネットワーク研究室

講演

時間が流れる正しい方向に関する感覚の神経起源

羽生奈央[ダイナミックブレインネットワーク研究室・D5/D5]

日時 2023年1月12日(木)12:15〜13:00
場所 吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室及び配信
言語 日本語
世話人

中野 珠実 准教授
E-mail:tamami_nakano[at]fbs.osaka-u.ac.jp
TEL:06-6879-4431

時間が流れる正しい方向に関する感覚の神経起源

時間は一方向に流れ、逆方向には流れないというのは、人類の長年の知識(信念)です。この知識が脳のどこに、どのようにインストールされているのかを解明するために、日常生活シーンを映した短いビデオクリップ(再生時間3秒、n=360)が正常な方向で再生されているか、逆方向で再生されているかを判断する方向判断課題を導入しました。興味深いことに、動物、人間、乗り物の前進運動、物体の自由落下、粒子の拡散、ある物質の手による分割(または追加)など、いくつかの特徴的な場面では、私たちは正しい方向よりも逆転した方向を早く、同期的に検出できることが明らかになりました。私たちの脳には、「正常」検出器ではなく「逆転」検出器が備わっているようですが、実際の世界では決して起こらない逆転に脳が備えていると考えるのは筋が通りません。
この謎を解く手がかりを与えてくれたのが、機能画像研究です。方向判断課題では、外界の「順モデル」を獲得する部位とされる左小脳と、生物の運動を表現する右中側頭回との間に、強い双方向性の機能的結合が現れました。これらの領域の活動は、上述の特徴的なビデオクリップを逆再生したときに、より強くなりました。この結果から、時間の正しい方向に対する知識は、実際には、次の瞬間に外界がどのように展開するかを、自動的かつ無意識的に予測する順方向モデルの、予測誤りを検出する役割を果たす「逆転」検出器によって補完的に支えられていることが示唆されました。

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