有限遠補正光学系と 無限遠補正光学系
さて,先に述べましたように,顕微鏡は,二つのレンズを使って,像を拡大する装置です.
顕微鏡システムには,
有限遠補正光学系
無限遠補正光学系
とがあり,最近の顕微鏡のほとんどは無限遠補正光学系です.
では,この二つの違いは何で,なぜ,最近は,無限遠補正光学系が多用されるようになったのでしょう?
これを説明するために,上記の図を単純化して,軸上から発せられる光の軌跡を追ってみましょう.
この光学系で重要なのが,青い矢印で描いた,
対物レンズと接眼レンズとの距離(S2+S3)が決まっている
です.
これが,有限遠補正光学系です.
これに対して,無限遠補正光学系は下図に示すように,
対物レンズで集光された光は対物レンズのみでは集光せず,平行光となる.
結像レンズを通して中間像を結ぶ.
光学系になっているのです.
これが両者の大きな違いです.
では,無限遠の特徴は何でしょう?
一つの大きな特長は,対物レンズから先の光は平行光なので,
青い矢印(対物レンズと結像レンズ)との距離を自由に取れる
点です.
つまり,対物レンズ後の光学系を自由に設計できるのです.
最近の光学顕微鏡は,蛍光顕微鏡がメインとなっていますので,その間にダイクロイックミラー,フィルター,などを多数入れる必要があります.
そのため,この間の距離に自由度があると,非常に設計が楽になります.
なーんだ,設計の自由度だけか,と思ったかも知れません.
しかし,次ページに示すように,像のクォリティを考えても,無限遠のメリットは大きいのです.